放課後、日が暮れるのが早い冬。
下校の時刻を告げる放送。
がらんとした教室の、指定席。
頭を撫でようとして、ふと伸ばした手。
撫でる前に、その人は起きた。
「……?」
少々寝ぼけているようで、薄暗い教室に俺がいることの違和感に首をかしげている。
「会長、皆が教室遠巻きに見てましたよ」
まもってもらってる自覚ないのか、この人。
ちょっとひやひやしたぞ、俺は。
なんていわないで、起きるまで近くにいて眺めていた。
西日に透けた髪の毛が柔らかそうで、ついつい誘惑に負けて、手を伸ばそうとすると、まるで、お前の考えることなんてお見通しだといわんばかりにタイミングよく起き上がったその人に、俺は笑みかける。
「……古村」
「はい」
「その口調、気持ち悪い」
「…敬意、ですよ」
「気持ち悪い」
「……あんた、うちのリーダーよりめんどくさい」
「かわいげ、といってくれ」
「うわ、めんどくせぇ」
愛だろ?なんて、俺に笑い返す。
性質も悪いなこの人。
「会長キスしていい?」
なんとなく聞くと、その人は少し何か考えたあと。
「じゃあ、俺の名前呼んでみろよ」
「無理」
「交渉決裂」
なんていわれても、俺はキスをする。
相変わらず、なんというか…ご馳走様だな、会長、おいしい。

「…陽介さん、帰りますよ」
「……照れた」
「だまって、かえりますよ」
名前なんてそりゃ、滅多に呼ばないんだから。