まさか、恋人が、先に風呂にはいっているとは思いもしなかった。
平然とした顔で、一緒に入るか?という魅惑的な誘いをされて、俺が断れるわけもなく…。
初めてではないんだ。
これでも、恋人で、その、なんだ…一応、それなりに、やることは…やっているし、もう、恥らう年でも…いや、年だからこそ恥らうところもあるかもしれないが。まだ、そんな年齢ではないはず。
とにかく、見慣れているはずのいい身体を、何時までたっても見慣れない俺は、困ったように、正面からゆっくり視線を外す。
年の差なのか、余裕の差なのか、想いの差なのか。
こういった状況になると、いつも追い込まれるのは俺の方が早い。
「…入浴剤、いれていいか?」
「今更か?」
透明の湯に俺のいたたまれない状況というやつが透けて見えてしまうかもしれない。そんなはしたない、もしくは理性のない、浅ましい俺を見られたくはない。
まだ、まだ大丈夫。平気だ。だが、最近どうも忙しくて…その、随分ご無沙汰だったわけで…。
ただでさえ、そういうのは、あまり、その、したいけどしたくない。
やはりそのまだ、恥かしいっていうのもあるのだが、どうしても。どうしてもそういう行為をこの恋人と…雅として、俺のどうしようもない姿を見せるというのが我慢ならない。
「ああ…ご無沙汰だったから」
そして、入浴剤を入れる入れないという話をしている間に、俺の身体はとても正直に反応していた。
「う…あ…見るな」
「なんで?チカがご無沙汰なら、俺もご無沙汰なんだが?」
え?と思う間もなく俺の身体に更に密着する雅。
一般的なバスタブのサイズってやつは、男二人が入って…しかも男二人が入って邪魔にならないサイズじゃない。つまるところ、どうしても接触してしまう。足なんか伸ばしたら、絶対。
ただでさえ、足をのばしきらないのに、だ。
それをだ、更に密着させる…にしても、こんな近距離に。みられるだけでなく、触るくらいの距離でと思ったときには、俺はあれ?っと思った。
意外な感触が。
「…ッ」
「な?」
「い、一緒に、握りこむな」
「わかりやすいと思うが?」
「ば…ばか…」
いうに事欠いて焦りすぎて馬鹿とか言ってしまった。
生娘かとかいう以前に、雅に対して…。
「ん、馬鹿でいい」
首元に顔を埋められ笑われると、たまったもんじゃない。
もうこうなってしまったからには、俺の痴態がとか言っている場合じゃない。
「…、み、みや、び…ッ」
一緒に握りこまれてそのまま上下に手を動かされ、声を詰まらせつつ。
俺は首を振る。
「ん?」
俺が首を振っても、雅は手を止めない。
「手じゃ…なくて…いれ、ろ…?」
そう、こうなってしまったからには。
どうせ痴態は見せてしまう。それなら、貪欲にいきたい。
あ、硬くなった。
「ほんと、いくつになっても、伊周にはかなわない」
俺のほうこそ、雅にはかなわない。

「なんとなく予測はしてたんだが…うん、ごめんな」
くそ…、なんで、本番前にのぼせるんだ、俺は。