肩までつかって十秒ほど
シマパンというものがある。大抵のオタクは水色と白のボーダーか、ピンクと白のボーダーのパンツを思い浮かべるものだと弟は言っていた。
俺は、ちらりと見えた紺赤金緑のシマシマに、なんの冗談かと思い二度見をする。縦シマではあるものの、もしかしたら、これもシマパンというものなのかもしれない。
「お兄様、それどうしたんですか」
「トラディショナルカラーだといっていくつかあったから買ってみたんだが……派手だろうか」
俺が二度見をしてしまうほどには派手である。
俺の代わりに頷いた弟は、真っ青なパンツを篭に入れた後、タオルを持った。
「しっかし、それにしても、生徒会解散記念で大浴場貸切ってのは誰の希望だァ?」
さっさと脱いでケロヨンとかかれた桶を持った兄は、首を傾げる。だらだらと脱いでいる俺としても尋ねたいところだ。
「昔の会長がはじめたことらしい。大浴場があるのに、一回もつかえねぇとは日本人として残念至極だといって、最後の最後に貸切にしたのが始まりだそうだ」
生徒会の人間は、人気者である。普段と同じように生徒に開放した状態で、この大浴場に入ると大欲情になるという話が風紀委員会にも密やかに語り継がれていた。
確かに、明日から生徒会長ではなくなる会長は魔性の男だ。大浴場に行くというだけで、生徒が押しかけ、脱衣所に行くことすら困難を極めそうである。
「で、なんで俺はここにいるんだ……?」
ちゃっかり服を脱ぎながらいうことではない。しかし尋ねずにはいられなかった。
「アニキ野郎が、天使の裸を見たら目がつぶれるっていうから、アニキ野郎のかわりに、兄さんを。できたら、お兄様と兄さんだけで入ってもらいたかったんだけど、お兄様がそれはちょっととかいうから」
「お前と違って、恥じらいってやつがあるんだろ」
「ハァ?」
俺がなるほどと頷いている間にも、兄と弟は喧嘩をする。風呂場で喧嘩をしているのではないので放っておこうと、俺は何故かアニキ野郎に渡された檜の桶を手に持った。
「恥かしいか?」
「いや、風呂は、別に……ただ、二人きりは何か……」
珍しくもごもごと口を動かした会長に、俺はニヤリと笑う。
「まぁ、明日から会長じゃねぇんだ。チャンスはいくらでもあらぁな」
こちらをちらりと見た会長の頬は湯で温まる前から、ほんのり赤い。しばらく口をへの字に曲げ、眉間に皺をよせていたかと思うと浴場へと向かいながら、会長は早口にこう言った。
「かく……覚悟してろよ……?」
そそくさと浴場に行ってしまったその背中を見送り、俺は頭を片手で抱えてしゃがみ込む。
「あー……」
唸る俺と会長を交互に見たのだろう弟と兄が、先程まで喧嘩をしていたにも関わらず、仲良く衣類をまとめ始める。
「やっぱ、二人っきりのがいいんじゃない?」
「かもな」
そういって二人が逃げようとするから、俺は二人の足を掴んで引き止めることになったのであった。
おわり
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