金のエンジェル4



「…なんで…」
なんでも何も。好きなものは好きだから。
「どうして!」
どうして?恋愛対象じゃないから。
学園に入ってどれくらいたつだろう?
俺は、結局、高校三年のこのときまで、俺を好きだという連中に『なんで』『どうして!』などとなじられ、詰め寄られたことはない。
たった今、大勢になじられているが。
俺が人を好きでいられる期間は短い。
俺が飽きる、というわけではない。
すぐに振られてしまうからだ。
振られた翌日、すっぱり忘れてしまうわけではなく、それなりに引っ張って二週間から一月、新しい恋でもすれば忘れてしまうだろう。と転化する。
思い返してみて思う。恋愛体質である可能性が高い。
人を好きでいられる期間が短いということは、ばれる間もなくころころ変わっているか、お気に入りが定まらない。もしくは移り気と思われていることだろう。
まさに、その通りで俺を好きだという親衛隊とかいう連中は、俺を移り気なやつだと思っていたようだ。
それを改めたのは、つい先日、工藤に振られたのを目撃されたからだ。
工藤は無事、大好きな人間のいる場所に転校して、会長のおかげですとかいらん手紙をくれた。俺は傷心だ。
もし、俺がこの俺を好きだといってくれる集団から好きな奴を選べるのなら、俺は幸せになれるんだろうか。
ふとおもったが、すぐに、微妙な顔をする。
それは、おそらく難しい。
「会長様が…ッ!会長様がその気なら…!こちらにも、考えが…!」
まず、俺は。
こういった煌びやかな集団が、あまり好きではない。
あと、押せ押せが苦手。
だから、こういう態度にでられると、非常に萎える。
「あ?」
思わず、微妙な返事もしてしまう。
だが、それよりも空気の違う言葉が俺の微妙な返事を消した。
「何やってんだ、お前ら?会長イビリか?」
Sクラスの教室の窓を無造作にガラッと開けた風紀委員長が、窓のサッシを跨いで教室に入りながら、いった。
意外な登場だった。
五階にある三年Sクラスの教室の、校庭側の窓からの。
「…ありえなくねぇか?」
俺の呆然の呟きに、風紀委員長はふふんと、鼻で笑った。
「テメェの振られっぷりほどじゃねぇよ」
「…何が」
「そうそう。いいこと教えてやろうか、てめぇら。会長様は、じゅ・ん・け・つ。その上、告白するやつは全員長続きするというか、殿堂いりのカップルになる。…ジンクスみたいなもんがある」
「おい」
親衛隊連中は風紀委員長の登場に驚きを隠せないでいたが、風紀委員長の『会長は純潔』…純潔?
「このクソッ…なん…!」
親衛隊の欲望に満ち満ちた目がこちらに…やべぇ、萎えるどころか、こえぇ。
「けど残念。会長様は好きになってくれない人が大好きなので、このままではファンタスティック!このままじゃ、無理強いでもされねぇかぎり…まぁ、魔法使いになっちまうかな」
「なんねぇよ!」
親衛隊はもはや、鼻息が荒い。
俺はもうそちらは見ないことにした。それより、問題は風紀委員長のクソ野郎だ。
「だ、が。無理強いは、風紀に相談してからしてくれないと、俺も面倒だからな。まぁ…そうだな、会長のお初がほしいやつは、まず、風紀に委細相談の上、俺を通せ。これのお初は守ってやるから」






銀のエンジェル4



余計なことはしたくねぇんだけどなぁ。と重たい腰を上げる。
よからぬ情報を手に入れた。
今更、振られん坊がばれたからって、親衛隊がいきりたってとたんに殺気だち、こうなったら、会長様を襲って。とか言い出した。
という情報だ。
なるほど、放課後に囲まれる会長。
憐れ!大人の階段を駆け上るどころか転げ落ちる会長。
…に、ならないように、俺が出動しなければいけなくなったわけで。
できるなら、余計なことはしたくない。
しかし、委員長がいってくれるのが一番説得力ありますよ。牽制にもなるでしょうし。とかいうから。
俺はとりあえず、会長の貞操を守りにいったわけだ。
「会長が、会長が好きなんですぅうう」
って、まぁ、泣きつかれて、泣き落としにかかる連中を突っぱねること一週間半。
飽きてきた。
なんで俺はこういう手段に出ちまったんだろうなぁ。
と、いうのも。この煌びやかな集団。心底会長が好きだ。
社会にでてからも会長会長と頑張ってしまいそうなくらい会長が好きだ。
屋上でまじないを大声で叫ぶくらい好きだ。
そのくせ、会長ハーレムといわれるくらい、綺麗どころというか…。まぁ、整ったやつらばかりなのだ。
会長に狂っておかしなことになって、思いつめているが、結構まっとうな人間がそろっていたりもする。
そういうのは、知らぬところで本気に焦がれられていたりするわけで。
俺は、その情報を知っている。
故に、見合い仲介みたいなことを今現在はそれとなくしているわけで。
今のところ、成功率は100%。会長も安心のリリース率。
俺のせいで貞操の危機に陥っているというのに、あまりの成功率に会長も『すげぇな』とおどろくばかりの有様だ。
まぁ、他の風紀どもも使ってありとあらゆる恋と脳の錯覚と心理戦を繰り広げてだな…最近は、風紀の連中も恋愛不信になりそうになっている。
会長を見習え。今日も元気に新しい恋をさがしているぞ?
「なぁ」
「あ?」
「俺は、もしかしてテメェのこと好きんなったら、幸せだったりするのか?」
「ああ?」
俺の根城でイエスノークッションを持って真剣に各所の隠しカメラが映し出す映像を見詰めながら会長様様が呟いた。
思わず横から倒して、シャツのボタンを一気にぶちきった。
「ト・リ・ハ・ダ」
耳元で囁いてケタケタ笑ってどいてやると、ソファーの端でお膝を抱えて腕をさすりながらガタガタ。
「もっと健全なアンパイ狙えや、チェリー」
はーあ…そう思えばだいぶご無沙汰なんじゃねぇの、俺。




金のエンジェル
俺様ファンタスティック・チェリー
はじめては好きな人とがいいにきまってんだろ!
大事にしてんだよ!


銀のエンジェル
爛れてるうえに、大変な危険人物。
そろそろ色々捕まりそうなミステリック風紀委員長。

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