そんなわけで、副会長と料理勝負をすることになった俺は、今、キッチンに立っている。
しかも変装後姿で。
なんだ。なぜ、ギャラリーがたくさんいるんだ。意味が解らない。
「なんというか、その…悪い」
暗殺者の格好の副会長が謝ってきた。
反則狙撃の格好の俺は、首を横にふった。
「いつものことといえば、いつものことだ」
『それではこれより、第一回、調達は自らで!料理対決を始めま〜す!では、両者、スタート〜!あ、司会は皆のガンマン。早撃ちでぇーっす』
早撃ちの言ったとおり、何か微妙にサバイバルはいった料理対決が始まってしまったのだが。
俺は遠慮しない。
おもむろに携帯端末を取り出すと、そっと転送許可をもらい、こちらに材料を転送してもらう。
インスタント食品、野菜、ハム等だ。
『おっと、反則狙撃!ハジメから反則だー!転送してもらったものが、インスタント食品というあたりでもうすでにアウトだー!』
だまらっしゃい。
多めに転送してもらったため、材料は暗殺者に分ける。
『おっと、此処で共犯者を作るあたりが、反則狙撃ですね。ゲストの猟奇さん』
『まったくです』
良平が司会席の隣のゲスト席にすわっているのが、憎らしい。
ポイズンよりマシだろ。ポイズンより。
だいたい共犯ってどういうことだ。良心的といってくれ。
『ここで暗殺者、包丁を取り出しましたー!野菜を片手であらいながら、なんと、包丁を弄び始めたー!って、怖い怖い!やめてー!それやめてー!』
包丁回すだけならまだしも、空中でクルクル回してキャッチして包丁で遊んだあと、急に逆手に持って洗った野菜眺めたら怖くもなりますとも。
暗殺者はお構いなし。
洗った同じ種類の野菜を数個一気に宙に上げると包丁を一閃。
みごとなみじん切り!
油を敷いておいた鍋でキャッチ。すばらしい!
ていうか、なんで、そんなパフォーマンスいるんだ。それが普通なのか、暗殺者。
ギャラリーから感嘆の溜息がもれた。
皮も逆手にもった包丁で器用にきっていくから、すごい。
『暗殺者さんはエンターテイメントをよく理解してらっしゃいますねー。それにくらべ、反則の地味なこと!』
だまらっしゃい。
堅実に野菜切ってちゃダメなのか!
『野菜くらい超長距離からうってなよーこなごなだろけどー』
貴様は粉々で大きさぱらぱらな食い物が食べたいのか。
あえて聞かずに無視して調理する。
それともそのへん飛んでる鳥でも撃てばいいのか。
しかし、解体ショーのあとに食いたい食べ物でもないだろ。
そして普通に野菜をいためはじめる。
ご不満な視線はこの際無視である。
暗殺者より早く飯が出来てしまう俺は、さっさと司会者とゲストの前に料理を出した。
『なんと、反則狙撃!料理はインスタント麺です!調理したといえるのかー!?』
三回目になるけど、だまらっしゃい。
野菜いためたし。それなりに工夫もしたんだぞ。
『味なんて決まったもんだろう』
ポイズンクッキングに言われたくはない。
そして、なんだかんだ言いつつ二人がインスタント麺を食い始める。
『……悔しいけど、おいしいです』
『ふ、普通に食うよりうまい…』
だろ?俺は手軽に一工夫させてもらったからな。
調味料だったり、麺の固さだったりするわけだが。
難しいものは作らないし作れない。作ったことないから。
けど、簡単なものをちょっとの工夫でおいしく頂く。
そんなこんなをしていると、暗殺者の料理も出来上がったようだ。
まぁ、カレーだった。
『気を取り直して暗殺者の料理は、カレー!では、頂きます!』
気を取り直さなきゃならんのかい。
つっこまずに様子を見る。
良平も早撃ちも暫く無言で、何口か食って、首をかしげる。
何度も何度も首をかしげ。
『普通…』
という結論に達したらしい。
おいしいといえばおいしいし、まずいなんてことはないのだけれど、特別!というわけではなく。
まぁ、普通だったわけです。
結局どっちが勝ちなんだろう?というのは、何故か、委員長と会長が掻っ攫っていった。
対決している隣で出店だしました。
二人して何してんだろうとおもったら、ま、何処かの魔法使いが1枚噛んでいたようで。
「ふふふ、売り上げで打ち上げですね」
うれしそうに笑っていた。
会長が具沢山スープで委員長がから揚げサンドだった。
普通にうまそうだった…よ…。
俺が食おうとしたら、全力で鶏がらくれた会長がもう、いっそのことすがすがしいです。