気になることでした。
いや、たいしたことじゃない。だけど、それは大変気になることでした。
けれど、だからって、それをあえて聞くことなんてないこと。
でも、気になっていた。
「パンツ、何色?」
pan1
動くたびにちらっちらっと見えるパンツ。オシャレにもほどがある。毎回違う色だった。
ソレを見つけてしまう俺もどうかと思うのだが、気がついてしまったからには気になるもので。
本人と二人きりの時に聞いてみたのだ。
すなわち、パンツが何色かと。
「はぁ?」
「いや、なんや、毎回、違わん?」
「あー…」
眼鏡をそっと外して眉間をもんだ一織さんは、お疲れのようです。
「キョー」
「あ、はい」
「キョーは、何色か教えてくれるのなら、教えてやる」
何色か。と問われたら、答えるのが難しい。何故なら、今日のパンツは非常にカラフルだからだ。
「えーあー…三原色と白と黒はあったんやないかなぁ」
「なんだ、それは」
「モザイクブロック柄やねん。色あわせ結構キッツイ感じの」
「ああ…この前の」
「そうそう、この前襲われたときの」
いやぁ、あれは貞操の危機でした。思わず襲われたソファーの隣にあったローテーブルからテレビのリモコンをとって投げつけるくらいには危機でした。そのあと、さらに追撃として机の上のものを手当たり次第投げ、一織が避けることが難しくなってきたあたりで、からがら逃げたのはいい思い出です。
それから、スキッとローテーブルの上が片付けられたのは、もう、怖くて仕方ない事実です。
「で、や。パンツ何色?」
「自ら確かめようという気はねぇのか?」
「確かめたら、俺がいやーんなことになってまうかもしれひんやないの」
ええ、なにせ、先日、いやーんなことになりかけてましたからね。ああ、怖い。
「まぁ、いい。今日は黒に赤ラインだな」
「黒に赤ラインとはエッラいセクシーで」
「勝負してもいいんだぞ」
「せんでええわい、ボケ」
軽くチョップをすると、チョップした手をそのままに、一織が首をかしげた。
「お前なら、あの手この手を使って俺の貞操狙ってくると思ってた」
ええ、反則とかいわれてるんでね、そうでしょうね。
けど、俺はだからこそ、ソレを笑う。
「まぁ、そやけど。あの手この手つかわへんくても、一織の貞操奪えるくらい一織に俺を好きになってもろたらええわけやしね。どちらかというと、そっちのほに、手ぇまわしとるさかい、安心してくれてええよ?」
「……ッくそ、これだから」
にっと笑って、キスをする。
まぁ、まず一勝なんかな?
「おまえも、覚悟しろよ?俺も、その気にさせてやる」
違う、一引き分けか。