まぁね、なんということはなかったけど、結局、どうしてそういうことになったのかなぁってのは、うん、ちょっと振り返ってもわからない。



pan2

このおいしいのか危険なのかという、十織馬乗り状態になったのは、どうしてなんだろうなぁとか。
「おい、なんとかいえ」
「なんとか」
「シネ」
俺のズボンに手をかけて今にも下ろそうとしているのを必死で俺が止めているこの状態はいったいどうしたら回避できるんだろうなぁ…とか。
「だから、今日はパンツ、何はいてるか教えろ」
「いや、教えるんはやぶさかではないんやけども…だから、なんで?」
「は?それこそ俺が教えてやる義務があるのか?」
「いやいやいやいや、俺が気になるから、ね?」
「ね?じゃねぇよ、さっさと教えろ」
「もーさっきから、そんなばっかやん?理由さえわかればさっと教えるから…」
十織の手が止まる。
パンツごときでどうしてこの状態になってしまったのか。解らないから振り返っては見るものの。
今日は何故か、いきなり十織がやってきて、パンツについてきいてきた。俺がどうしてパンツのことを聞きたがるのかきいた。聞いても聞いても、十織は理由を言わず、実力行使に出た。
俺が十織には強く出ないことをしっているようで、十織は俺をソファーに押し倒した後馬乗りになった。
それで、この状態ですよ。
「…だって、兄貴は、知っていた」
「…?」
「お前の今日のパンツがなんであるか。俺は、お前の恋人なんだろ?なら、俺が知っておかしくないものをなんで兄貴が知ってんだとか。それがでたらめか本当か、確かめたいとか、そんなの、アレだろ…普通にいうのは、恥かしいだろ」
先ほどまでの勢いはどこにいったのか、急に意気消沈。
どうせ、兄貴のが話合うだろうし、俺は割と回りくどいの好きじゃねぇし。兄貴みたいに頭まわんねぇし。と、結局ブラコンとコンプレックスを発揮し始める十織に、んー…と俺は頬をかく。
「あのなぁ、今日は、あれやねん。実習が一緒やって…たまたまシャワールーム一緒やっただけやから。ほら、三年上がってから、変装なしやろ?」
「そう…だが…」
「とにかくな、パンツについてはそういうことやから、ひぃのいうた通りや」
「濃灰のボクサー?」
「そや。てか、ようみとるな、ひぃ」
「……兄貴の名前を呼ぶな」
「んー…わかったわかった、トオ」
「ん」
まったくかわええなぁ、もう…。
パンツごときで迫られて名前くらいで上機嫌なんて、なにか、俺に対するサービスデイなんじゃないだろうか。
「……それにしても、なんや、細こい…。また、やせたんちゃうん?」
「……………気のせいだろ」
「気のせいやないみたいやね。もーなんで自分のためにご飯食べへんのかなぁ…」
「一人で食うのは味気ない」
「友達おるやろ」
「それでも、お前や兄貴がいないのは味気ない」
「しゃあないやん、実習と演習詰み詰みやねんから、もうちょっと食べて?せやないと、俺も心配でやせるわ…」
「……それは嫌だ。今をキープしろ。…俺も、なんとかする」
ああ、今日じゃなくても可愛い人だった。うっかり。