何処か西の方の風習だった。
本来ならば仮装してしなければならないものだったのだが、仮装することなく俺は挑んだ。
「お菓子くれなきゃイタズラするぞ」
会長は、俺を見た瞬間に、それはもう嫌そうな顔をしてくれた。
眉間に寄った皺をそのままに、俺の言葉を鼻で笑った。
「やらねぇし、させねぇし、キモイし、帰れ」
心がとても折れるセリフだった。
俺は、がっくりとうなだれ、仕方ないので三角の苺のキャンディが束になったものを会長に渡す。
「は?」
「どうせ貰えもせんし、反応も良うないとおもっとってん。せやからなんちゅうか、あれかなぁ。せっかくやし、お菓子あげたらええんとちゃうかなぁと思うてやね」
「……」
素直にキャンディは貰ってくれたので、ホッとしつつ、会長がキャンディを貰ってくれたことに顔をにへにへさせる。
「貰えもしない上に、反応も良くないと思うならやめたらいいんじゃねぇの」
ものに良いも悪いもないといった感じでキャンディをしげしげと眺める会長。
お菓子とか悪戯といかいう風習には合致しないのだが、こうして会長を餌付け…もとい、会長と触れ合えることが俺には大事なわけで、お菓子は二の次である。
「せやねーそうかもしれひんねー」
素直すぎるくらい素直な反応をする会長が可愛らしいとか、これは惚れた欲目か。
いつか、お菓子か悪戯で悩んでくれる日を期待してやまない俺であった。