ハロウィンパーティーをしようといったのは、晃二だ。
それにのっかったのは、いつものメンバーで、そのメンバーに混ざる形になったのは、俺、鬼怒川、古城のこれもいつものメンバーだった。
「あー。お菓子もいたずらもいいわ。眼福〜」
簡単に仮装をした俺に、晃二がからかい半分言ってきた。
「吸血鬼とか、トノちんあれかな?高雅院せんぱーいに悪戯する気まんまんかな」
「ハァ?おまえ、バカか?なんで高雅院に悪戯なんかするんだ?黙って菓子を差し出すことはあっても、二択なんてする必要もねぇだろ」
心底不思議だ。
何故、俺が高雅院に悪戯をしなければならない。
晃二を胡乱な目でみていると、不意に、笑い声が聞こえた。
間違えるはずがない。高雅院の笑い声だ。
「チカ、それじゃあ…俺から言おうか?トリックオアトリート」
高雅院は半分爛れたような特殊な何かをつけて、笑っていた。
ゾンビ、なのだと思う。
白鶯以外の参加者は、仮装が本格的だった。
よく学び、よく遊べの精神をまっとうした連中は、コミカルというより、身長なども相まって怖いくらいの仮装になっていた。
高雅院はところどころただれているが、それでも男前のゾンビであるし、絡んできた晃二は顔色が悪く、継ぎ目もナマナマしいフランケンシュタインだった。
「どれがいい?」
俺はチョコ、飴、クッキーが入った袋を開ける。
白鶯でも、ハロウィンは人気のイベントだったことから、この日は菓子を持ち歩くことにしているのだ。
いらぬ悪戯はごめん被りたいから。
「……そうだな…じゃあ、悪戯で」
おかしい。
俺は首を傾げる。お菓子か悪戯の二択ではなかっただろうか。
お菓子を渡そうとしている俺に選択権がなくなっている。選択を迫られているのは俺のはずだ。
首を傾げたまま、不思議そうな顔をしていたのだろう。高雅院がさらに笑って、言葉を続けた。
「冗談だ。そうだな。クッキーでももらおうか」
そう言うと、俺の持っている袋からクッキーをとりだし、高雅院は俺に近づいた。
頬に何か当たったと考える前に、高雅院は晃二と似たような種類の笑みを浮かべる。
「また後でな?」
俺は頬を抑えながらぼんやりする。
「結局悪戯されたのか?」
鬼怒川がふらっとやってきてそういうので、俺は現実に戻ってきて眉間に皺を寄せた。
「菓子もってったんだから、悪戯なわけないだろうが」
「じゃあ、本気か?」
「ほん……」
どうしようもなく顔が熱くなった。