『治らないなら仕方ない』


日向と妹尾と、恋人として付き合い始めて気がついたことがある。
日向は自分でできることが多いせいか、人と一緒に何かをするということが少なく、結構人見知り。
妹尾は無邪気なところがあるせいか、すぐにふらっとどこかにいってきて、何故か飲食物を獲得して帰ってくる。
妹尾はすぐにくっつきたがるけれど、日向は本当に控えめにちょっと羨ましそうにしてることが多い。
だからついつい、俺は日向を冗談半分、本気半分でかまってしまう。
「日向、左、余ってるけど?」
右側に妹尾をはりつけ、甘やかしてる最中に、少し羨ましげに、それでいてこの光景にちょっと幸せそうに、柔らかな表情を浮かべた日向はかわいい。
「いや、仕事があるから」
日向の部屋で集まることが多い俺達は、よく働く日向にいつも感心している。
しかし照れ隠しの一部だということもよく知っている。
「妹尾、一二三くんは今日もお仕事だって。寂しいね」
「一二三、寂しい」
同意をした妹尾は、いい悪戯を思いついたというような顔で俺を見た。
そして、そうやってからかうといつものように俺ではなく日向は妹尾を睨みつける。
「道哉!」
仲が良くてかわいいんだが、俺も構ってくれないだろうかとか思ってしまう俺は贅沢ものなんだろう。
「じゃあ、終わったら二人で一二三をおもてなししようか」
「わかった」
日向のことを無視して、二人でそう決定する。
「……さっきから、夏川も…ひふみってなん…だ…」
「そうだなぁ…わざとだよ」
にこりと顔に笑みを浮かべると、妹尾が俺の腰に腕を回しながらベタっとひっつき尋ねてきた。
「夏川、俺は?」
「道哉」
「ん」
それだけで満足できてしまう妹尾が可愛らしい。
「俺は無理だ…心臓がもたない」
「がんば」
なんて会話が二人にあったなんて、ちょっと幸せすぎて浮かれていた俺は知らない。




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