我慢比べは得意じゃねぇよ3


「……いや、それは」
煮え切らないあいつの声を聞きながら、俺はあいつに近づく。
生徒会室にはいってきた時点で、すでに、俺は恋人をお持ち帰りすることしか考えていなかった。
「とりあえず、宗正」
初めて名前を呼びつつ、あいつが正気に戻らないうちに唇をあわせる。あいつは俺に対するガードが甘い。いつでも来いといわんばかりのあいつの唇を奪うことなど造作もなかった。
「ん?んん?んー……っ?」
舌を入れて、かき回してぼんやりしているうちに、咥内を楽しむ。俺の好きなように荒らしたあとは、いつもあいつが好むようにしてやる。いつもなら離れていくタイミングを延長して、キスではないものを求めさせたかった。
「……いいよナァ?」
唇を離し、笑うと、うっとりとした顔をしたあいつが俺を見上げてわずかに笑む。俺以上の色気を感じる瞬間だ。
この状態のあいつを生徒会室に置くつもりはないが、少しだけ見せ付けてやりたい気もする。これは俺のものであって、お前らのものではない。仕事を肩代わりさせたり、便利につかったり、まして性欲の処理なんかに使えるものじゃないとわからせてやりたいものだ。
もしも、おかずになるのなら、それは仕方ない。あいつが性的に見えるのは俺のせいなのだから、こっそりどこかしらないところで罪悪感でも覚えながらしておけばいいのだ。
あてつけたり、あいつを襲ったりしようものなら二度とまともにたてなくしてやろう。
そういう気持ちと、あいつ自身が俺にしかみせることはないだろうとわかっていることから、俺は、もう一度笑い、あいつを生徒会室から連れ出した。
生徒会役員の連中は、俺の言葉に一も二もなく頷いているが、転校生が少し残念そうな顔をする。
あれは純粋にお気に入りを取られてするような顔ではない。
俺はあいつの背中を押しながら、生徒会室のドアを閉める前に振り返る。
そして、中指を立て、舌を出してやった。
二つに分かれた舌に気がついたのは転校生だけらしい。痛そうだという顔をした。他の連中は、早く帰れと手を振ってくれる。
「なぁ、あの転校生、面食い?」
「そうなんじゃねぇの?あいつのまわり美形しかいねぇし、つうか、愛でるのが好きっぽいし……そんなことよりはやく」
転校生をどうにかしたほうがいいだろうかとよそ事を考えている暇はないらしい。そんなことより、俺のことを考えろとあいつが主張してくる。
「んー……がっつくなって、まだ校内だろうが」
「……隠れてでも、ほしい」
後日、がっつく恋人に促されるまま、隠れて校内エッチを決行したところ、転校生に見られていたことが発覚した。
転校生に一応事情を聞いてみると、ネタがなくて……と項垂れたそうだ。
事情の聞きだし方がよかったせいか、それからは転校生もすっかり静かになってくれた。なんでも、俺とあいつのあれそれはえぐいらしい。泣きながら謝っていた。
そうして俺は、今日もあいつにコーディネイトされつつ、ピアッシングをする。
「そろそろモノにもやるか……」
「いや、それはさすがにこえーから、ちょっと」
視線を逸らしながら、首を振り、俺の腕を握る姿が可愛く見えるため、しばらくはそれでからかおうと思った。
誰がこんな可愛いのを構わずにいられるというのだろう。
絶対に離してやらねぇし、我慢なんてしてやらねぇよ。



おわり

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