手を差し出すと、迷わずにいられない。
それが可愛いといったら、歪んでいると友人はいう。
「ヒサヤさん、俺の何処がすきなん?」
軽く尋ねたように見せかけて、心底真剣。
そういうところが好きだ。などと、一言も言ってやらない。
「さぁ?」
一度溜息をついて、流すための言葉を使うと、一瞬傷ついたような顔をするくせに、誤魔化そうとする。
「えーいけずやわぁ」
そういうところが、可愛らしい。
「ちょーっとくらーいええやんねぇ?」
なにか節をつけて、ソファーに寝転がる人間を無視して、携帯を弄る。
その距離、机一つ分。
向かい合わせというわけではない。
「…出し惜しみはしない主義なんだがな」
「……えー…」
ごまかしきれずどうしようなんて顔をする。
出し惜しみではなく、出さないし、本人には言うこともないだろう。
「やったら、ヒサヤさん、俺のこと、………嫌いなん?」
「どうだろな」
ほら、今にも泣きそうだ。
わかっているから止められない。
移動の際、頭を撫でて、携帯のボタンを押す。
撫でたあと、顔を上げた時田が、それに気がつくのは、暫く時間がかかることだろう。
俺はキスをしながら、おそらく、笑った。
From:ヒサヤさん
Subject:無題
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好きに決まってる
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