欲求不満度指数レベル3


少し見下ろすように視線が下がる。
「そ?」
興味がまったくないことが手に取るように解る態度に、声色。それはそれでかっこいいと思っているが、それ以上に目の前が暗くなる。
恋人ということも遠慮してしまうような人を好きになってしまった俺が悪いのか、何事にもあまり興味を示さない人だと知らずに好きになってしまったのが悪いのか。なんにせよ惚れた弱み、だとは思う。
今も一度こちらに視線を向けたあと、パソコンに視線を向けた。
絡みたがりである自覚はある。だが、構われたがりではなかったはずだ。
自分から執拗に絡んでいくのは好きなのに、必要以上に構われるのは嫌で、適度に放っておいてほしい質。
わがままな気質だったのに、上条さんには構われたい。場所も時間も関係ない構われたい。
それというのも、俺が絡んでいかない限り、こちらさえ見ないような人だからだ。
最初はそんなことは無かった。
俺に最初に興味をもったのは、きっと、上条さんだった。 それなのに、今じゃこの体たらく。
「せっかく成績いいんだから、行っておけばいいんじゃないか」
そんなことを上条さんがいうものだから、うっかりその気になって受験生になった。
上条さんは社会人。
そうそう居場所が変わることのない職業についているから、俺はできるだけ近くにいるのならと、この学校の大学部に進学することにした。
大学に行くという話がなければ、俺は就職しようと思っていた。
在校生が鬱陶しいが、学校の職員になることも考えた。
このままいけば、俺は上条さんと職場を同じくするには教師になる道を用意できる。
それもいいかなと思っていた。
「おまえ、もうちょっと成績に見合ったところに行けよ」
パソコンを見つめながら、ため息みたいに上条さんが言葉を漏らした。
「いやーでも楽やから」
理由は別にあるのだが、進学が楽だからという理由で学園の大学部を受験するということにしてある。
「やりてぇことねぇのはわかるが」
上条さんもやりたいことがなく、この学校に来るまでフラフラしていた口だ。
今も、この学校で働いてはいるが、いつ居なくなってもおかしくない人である。
「あは、なんや、手厳しいわぁ…上条さん」
上条さんは、マウスにのせていた右手で頬杖をつき、パソコンの画面にせわしなく目を走らせている。
パソコンも、何か調べ物があって見ているはずなのに、その調べ物にも興味がないように見えた。
「…契機が、切れんだよ…」
一通り、文字に目を通したのか、漸く上条さんはこちらを見た。
「けーき?」
「この学校との」
「……うん?」
「一応更新を打診されてはいるんだが…」
俺は脳内で学校との契機が切れることについて考えた。
契約を更新しなければ、上条さんはフラフラとどこかへ行ってしまうのだろう。
そうなると、俺がこの学校の大学部にいく意味がなくなってくる。
「お前が外に出るなら、学校やめようかと思ってたんだが」
「え、それは、なんやその…期待してまいますが」
「期待してくれて構わない」
俺は重たく見えないようにヘラヘラ笑って返事をしようとしていただけに、その言葉に、どうしていいかわからない。
「え、あ、えーと…同棲とか」
「…するか?」
ナニコレ、盆暮れ正月が一気に来たんじゃないの?
「そ、外も検討してみ、る…」
「解った、早い目にな」



「…と、いう夢をやね…」
「あの人、自分の意思がないようなことする奴嫌いだろ」
「やよねぇ…俺、内部進学とかせぇへんし」
「興味ねぇっつか、嫌なんだろ、行くの」
「そー…。でも、上条さんに会えるの少のなるんは、ややわぁとおもててやね」
「妄想のような夢を見たと」
「……てへ」





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