中流家庭の次男に生まれ、運動神経まずまず。成績もまずまず。身長もまずまず。顔もまずまず。
ただし、中流家庭といってもこの学園の基準であって、普通なら金持ちとかいわれる類。
運動神経はまずまずだけど、体力はそこそこ。
成績も得意科目は特異。
姿形は普通だけど、癒されるとか折り紙付き。
そんな俺はちょっとビビリだけどあんまり普通の性格じゃない。
一匹不良な友人いわく、イイ性格。または図々しい、ふてぶてしい。
たくましいと言ってくれ。
そんなたくましい俺の交友関係はとても華やか。
元同室者で中学の時からずっと一緒の部屋だった一匹狼とかいわれている不良・古城蓮。顔は怖いし、口も悪いし、普通に暴力ふるうし。でも、短絡的ではない。すぐ切れたりなんかしない。意味なく殴ったりなんかしない。でも、正当な理由なんか求めない。そういう友人。代々芸術一家とかで、手に職ってかんじらしい。
その現同室者の、我が学園の矯正者、風紀委員長鬼怒川章吾。レンと同じくらいというかレン以上に怖い顔した人だし、口悪いけど、甘党で、不良っぽいってだけで、そんなことはない人。なんと、お家は没落した旧家。今のところ没落してることを表面的には隠してる。血だけはいいとか陰口たたかれて、すごくお見合いとかくるらしい。本人もご両親も、そういった口で結婚を申し込まれても応じようとも思わない。こんな家潰そうかとも思ってるらしい。友人というほど深くないけど知人というほど浅くない。これから友人とよべるようになれればいいな
と思っている。
それだけじゃなく、普段つるんでる友人も華やかで。
新聞部部長の腐った縁の腐男子とか、腐男子としりながら、もどかしい恋に落ちてる人とかとも一応友達。
風紀室にいくたび同情してくれる不良だってもう、友人くらいの気持ち。
平凡というにはバラエティーに富んでいると俺は思う。
もっとも、俺を平凡たらしめない原因であり、やたら平凡だと思わせている原因は、友達ではないと俺は思っている。
付き合いからいうと風紀委員長よりも、風紀委員室で会う不良たちよりも、長いのだが。
一方通行のきらいがあるそれでは、密度の濃さで負けてしまうだろう。
転校生・佐伯光輝(さえきこうき)。眩しいばかりの名前顔負けの、眩しさを発揮し目立ちに目立つやつだ。
まず、副会長の胡散臭い愛想笑いを撃破し、はっきりいうなぁ…と尊敬させ、友達になるといってメロメロにする。
次に、副会長がうっかりつれてきた生徒会に絡まれる。こっからが怒濤の展開。
バレッバレの変装に何それありえないアハ!ってなった会計を見た目で判断するなといって、会計の笑いのツボに殿堂入り。そしてお気に入りに。やがて恋だと勘違い。青い春到来。
同じくそのやりとりをみていた双子書記が珍回答を期待して、いつものどっちがどっち?ゲームを仕掛ける。野性の勘で双子を見分ける。双子は驚きすぎて、そして、脳の勘違いでうっかりフォーリンラブ。つり橋効果。
生徒会の補佐してる無口な人は、なんかもとより知り合いだったとかで、捕獲されてることが多い。
実は、噂の族つぶしである佐伯。その知り合いである補佐は不良…なんだけど。
ちょっととおくで不良をしているらしい。
知り合いだけどちょっと迷惑に思ってて、絡まれてる。
そんな彼は腐男子がお好き。まぁ、俺の友人なわけね。
置いといて。
その生徒会大集合!転校生と初顔合わせ!には会長さまもいらしたわけで。
会長さまの反応はもう、清々しかった。
まず、佐伯を一瞥。ありえないものを見たという顔をしたあと、佐伯をガン見。
次に、次々と自己紹介が行われる現場で、促され、抵抗なくさらっと自己紹介し、もうちょっと変装しようがあるだろってことを会長らしく発言。やっぱり見た目で人判断するなんてサイテーだ!と言われる。
その次に、会長は鼻で笑った。俺は胸がすく思いだったよ。面と向かってそれができるってすごいことだ。
文句が煩い中、迷惑そうに若干離れている補佐を拾って勝手にしてろと総無視。
無視すんな!と突進してきた佐伯を避けた…はいいけど、補佐が捕まって、風紀を携帯で呼び出す。
はい、佐伯連行。
そんな流れだったわけだ。
うちの会長は一応、夜遊びをする。
補佐を補佐にしたのも会長で、補佐が不良をしているのも知っているし、夜遊び仲間でもあるらしい。
副会長、書記、会計が不良をしているのも知ってるけど、その辺は深く追求しない方向。
夜遊び仲間には他にも風紀委員長もいたりする。
風紀委員長は不良ではない。ないけれど…不良が集まる場所を提供し、実は不良よりアングラなことをなされている。
正直、古城と佐伯のことがなければ近寄らない人だったけど。
そんなわけで、佐伯の噂はそこそこ知ってるわけだ。
会長や補佐、風紀委員長は対応しようとしたけど、ぐるぐる巻き込まれる。
そして、佐伯の同室者にさせられた俺は佐伯に自動的に巻き込まれ、俺を心配した古城が自ら飛び込み、スポーツ爽やか青少年にしかみえないやつが、風紀の副委員長の用事を届けに来て巻き込まれ…。
気が付くととんでもない華やかな集団ができてたわけだ。
ちなみに、風紀の連中は風紀委員長により、佐伯からガードされている。風紀委員長が男前すぎて惚れそうだ。
そんななか、憂愁の君こと我が校の番長は、クラスも離れているおかげで至って普段どおりな感じで過ごしてた。
過去形。
なんというか。佐伯は冒険という名の校内探索が趣味で。あっちきたりこっちきたりしていたわけだ。
ある日、番長である閂さんがツレの時田さんと屋上でさぼっているときに佐伯登場。
閂さんも時田さんも、佐伯の騒々しさに呆然。
さぼっちゃダメなんだぜ!ってどの口がいってんだ?な状態で、あれよあれよと友達宣言をされたようだ。
要領のいい時田さんは、なんだかんだと佐伯をさけ、一方、世話焼きな気質がある閂さんは胃を抱えながらもそれなりに付き合ってやっている感じ。迷惑そうだけど。
「あ、閂さん」
そして風紀委員室でいつもどおり会うわけだ。
「…筧」
声をかけると安堵したあと一瞬にして表情が通常に戻る。
ああ、かわいい人だなぁ。
「今日はお昼、もう食べましたか?」
食べてないの知ってるんだけどな。
「まだだ」
ほらね。
「じゃあ、これ…」
ごそごそと取り出したのは、なんと、一匹不良の素敵な調理人古城さま特性お重です。
古城が弁当作るって言うから、ついでに頼んだら、おまえはコレくらいいるだろって…5段。
ピクニック気分だ。
「どうしたんだ、これ?」
「料理研究家な友人がくれました」
嘘はついてない。
でもちょっと閂さんは、複雑そうな顔をした。
嫉妬とかなら俺がおいしいなぁ。嫉妬ならいいなぁ。