Where is strawberry?


初恋がハルだったと認めると、篠原に不思議そうな顔をされた。
それもそうだろう。
俺が、ハルを女の子だと勘違いしての初恋だった。
初恋は一目惚れ。
兄が三人、父が一人の男所帯。ご近所にも同じ年頃の女の子はいなかった。
兄の友人が連れてきたハルが女の子みたいな格好というより、女の子用の浴衣を着ていたのだから、それは女の子だと思ってしまうに決まってる。
今はすっかりスポーツマンらしくすらっとしていて、かつ、筋肉質な体型であるのだが、その昔は日本人形と言われていた。
正直、日本人形は整っているというか、怖い印象が強いのだが、黒髪のおかっぱで人形のように小さく、整った顔を持っていたらそうも言われるだろう。
とにかく、人形のような女の子にしか見えない、しかもピンクの女の子の浴衣なんて着ているハルをみて、恋に落ちてしまったのは、夏祭りということもあって仕方ない。
あんなものはその場のテンションだ。
しかし、俺の恋はすぐさま終わった。
ハルが男だと気がついたということではなく、ハルがわがままで意味の分からないところがあったからだ。
それは性別を間違えようがない今でも変わらない。
あの究極のマイペースかつ、マイワールドには幼馴染みの俺とてついていけない。
半ば放置である。
そんなわけで、それ以来仲がいいというか、俺よりハルとつきあいが長い奴もおらず、必然的に通訳としてセット扱いで、腐れ縁を続けてきた。
初恋は終わってしまったのだが、友人としても何かどうかと思うのだが、幼なじみだ。
変わらず友人らしいつきあいをし、ハルの熱烈なアプローチを無視し、放置し、たまに怒ったりもした。
ある日突然、ポロリと告白された。
冗談だろと笑って誤魔化そうとしたら、真剣で、これはまずいと思った俺は、さらりと逃げた。
それが俺のクラス落ちということになる。
クラスを落ちること自体は簡単なのだが、俺は学費をまけて貰いたい立場であるので、色々考えたものだ。
だが、単純にヤンキーになるということでそれを解決した。見本は兄にいたので楽勝であった。
そうして、俺が逃げたのにも関わらず、ハルが追いかけて来るものだから、また、ある日突然、俺とハルの関係がおかしなことになった。
ハルがまた、告白してくれたのだ。
今度もハルはポロッと告白してしまい、今度はハルが繕ったけど繕いきれず、ハルに逃げられてしまった。
俺はやっぱり逃げても問題は先に延びるだけかと考え直して、ハルと向き合うことにした。
まず、ハルのことをどう思っているのかということから考えてみた。
ハルのことを好きか。
答えはノーとはっきり言えた。
もちろん、嫌いではない。
だが、恋愛感情では見れないし、友人としても好きかといわれたら首をふりたい奴だった。
けれど、放ってはおけないし、なんだかんだつき合いも長い。一緒にいて嫌に思うわけでもない。
好きという言葉一つで、表せるもんじゃないと思っている。
強いて好きか嫌いかどっちかだといわれれば好きに分類するんだろうが、どちらでもないという選択肢を用意された場合、俺はどちらでもないを選択したことだろう。
つぎに、これからハルとどうしていきたいか。
どうしていきたいかというと、これまでと同じようにしていきたいが、二度もこんなことがあればそれは、難しいことで、関係性を変えてしまうほうが簡単である。
「それで、こーなっちゃうんだもんね、なぁおはなんというか、貧乏性?」
「おまえのその変換能力にはいつも、おみそれするわ」
あきれたように呟くとそうかな?と照れくさそうにハルが笑った。
残念ながら誉めていない。
「俺、きちんと振ったつもりなんだけどな?」
「えーだって、それで諦めるかどーかは自由じゃん。ふりーだむってやつだよ!わかるかな、なぁお」
「自由だが、何でそこでフリーダムなおまえをさらにフリーダムになるような……めんどくせぇ……」
説明が面倒くさくなって、俺は頭を抱える。
これだから、ハルがいつまでたっても俺が好きだ好きだとアプローチをしてくるわけである。
ハルが好きな後輩が可哀想だ。






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