不満、相違、危急、希求、総意、満足。
夏と放課後と隣の席2
いつも楽しそうで、目が合うと余計なことしか言わない。
あの時言った事が嘘だと言わんばかりに、いつもと変わらぬ態度。
あいつはよくわからない。
あの放課後の出来事以来、あいつを見ることが多くなった。
もし、あの告白に意味があったとしたのなら、俺の意識を向けさせるという点では成功している。
言動が軽くて、行動も軽い。足取りも軽ければ、常にご機嫌といった調子。
クラスのムードメーカーかといえばそんなこともなく、かといって友達は少なくなく、むしろ多い。
人の中心になることはないのだが、なんとなく集団に混じっていて、あいつがいなければ何となく寂しいなと思う。そんな存在。
俺とは気も合いそうにないやつ。
だからこそ、俺はあいつのことはどうでもよかった。
なんの興味もなければ、返答もしない、挨拶もしない俺に、あいつはそれでも話しかける。
今もそうだし、悪態をついても喜ぶ。
マゾか?と思うときもあった。
しかし、最近知った。
俺が反応を返しているということがアイツにとっては喜ばしいことだったのだ。
「しーぶやーくーん」
「ウゼェ」
「渋谷くん冷たいわぁ…」
笑いながら、あいつはいつも食べている飴を取り出す。
「でも、ま。返答ある分マシやんなぁ」
ぽつっと呟いた言葉に、なんとなく罪悪感を覚えた。