俺の浮気。
チョコレート、薄平べったい棒つき飴ちゃん、スナック菓子、手作りのカップケーキ。
隣の席の渋谷くん。4
女子なんてほとんどいない工業科。
そのなかで男子しかいないクラス。それの一つ。
他クラスが調理実習のあと、俺らが体育のあと、渋谷の机にあらわれた手作りカップケーキ。
渋谷はよくもてる。
正直かっこいい。
ちょっと悪い感じがするのも、女子にはいいらしい。
身長なんて俺より3センチ高い。
といっても、俺も182あるから、大抵の奴は見下ろせる。
で。
渋谷の机に手作りケーキが並ぶ中、隣の俺の机は尋常じゃなかった。
薄平べったいのから、袋ごとなの、駄菓子屋にうってるの、棒つきなの、期間限定なの、ソフトなの、喉にやさしいの、ぐるぐるなの飲む奴とかも…飴ちゃんこんにちは!
手作りじゃなくて買ってきてくれたものなのはわざわざと、思う。うれしい。
だけど、だ。
これ、面白半分に置いていったのもあるな?
ゲーセンの飴ちゃんのゲームみたいになってる。
帰ってきたクラスの連中もコレは置かなくてはと、飴ちゃん持ってた奴は山の中に置いていく。
そんな現場に屋上でさぼってた渋谷が帰ってきた。
「あ。渋谷、おかー」
いいながら、塔に刺すために飴ちゃんを分ける。
俺の本命飴ちゃんです。
渋谷は俺の机に微妙な顔をしたあと、自分の机を見てカップケーキを他の席に置いた。
相変わらずひどい奴。ま、いっけど。
「そーや、渋谷〜、飴ちゃんいらん?俺、タワー以外のんてェー基本浮気やと思んのやんかぁ」
どうでもいいという様子の渋谷は早くも寝る姿勢。
「やから、トゥギャザーしやん?浮気トゥギャザーオーナィッ」
何げに下ネタだったけど、渋谷は、一言だった。
「うるせぇ」
答えてくれるとは思ってなかっただけに、俺のなかではお花ちゃん咲き乱れマスタ。
あー渋谷口悪いなぁ。
さっそく浮気をはじめた俺は、バリバリと飴ちゃんを噛み砕く。
やっぱ棒がついてないと寂しい。