渋谷くんの好きなとこ。
ぶっちゃけ、顔とか仕草とか、外から見たとこ。
不良なのに悪ぶって見えないとこ。
一貫して解りやすい態度をとってくれるとこ。
隣の席の渋谷くん。7
そう、渋谷くんの外見というか。
噛みごたえありそうな身体が目当てだったとか、俺はとってもしょーじきです。
女の子はさ。
折れそうとか、やわらかそうが先にきちゃうし、噛みごたえという点で合格点に達することがない。
可愛いし、甘そうだし、においとかも違うと思うし、女の子が好きなのはやっぱりやわらかいからだと思うけど。
もちろん、固そうだからって、男を噛みたいということもない。
だって、何せ固そうだし。
皮だけとかカサカサしてそうだし、あぶらぎってんのとか特に駄目。
じゃあ、なんで渋谷くんなの?って話じゃん。
最初に渋谷くんを視界に入れたのは、渋谷くんが、俺の隣で、窓側だったから。という理由だけ。
あの、眠たくなる席で、例に漏れず寝ていた渋谷くんを羨ましく思って見た…わけでもなくて。外を見ようとした俺の視界に、不意に入った、髪が原因。
陽に透けて、柔らかそうに見えた野郎の髪。
なんとなく、うつぶせて寝る渋谷くんのをさらっとみて、耳を見つけて。
たくさんピアスのついた渋谷くんの耳は、こりこりしてそうだ。
と思った俺はこの時点でアウト。
起きて、片方だけ頬杖ついてる渋谷くんの手首の骨の出方とか、僅かに出た、手首とか。
筋肉、脂肪、皮、…とにかく、マニアックな話、噛みごたえありそうだなぁとおもったわけで。
そうこうしている内に、うなじだって、喉仏だって、噛みごたえありそう。
なんて、思いながら飴ちゃんをガリガリくだく、俺はただの変態です。
簡単にいうとね、食指が動いた。って奴だと思う。
「…んだよ?」
渋谷くんは、飴ちゃんをあげてからというものね、意外とね、普通に話してくれるようになったよ。
俺は結構、好感情を渋谷くんにあらわしてると思う。
一応『好き』っていうことにしてあるけれど、一言に纏められるような感情なのかなぁとか、いつも思うわけで。
「渋谷くんは、いつみてもかっこいいなぁと思うてやね」
欲望が先立っちゃってるし、複雑な気分ではあるのだけど。
代わりなんてないような、気がして。
「はぁ?」
いやそうな顔をする渋谷くんも。
きっかけはどうであれ、なんだかとても気に入っているので。
「まぁ、気にせんでえーえよーう」