ねぇ、たとえば、俺が優しくて、いつも君を大事にして、好きだっていう人間だったら、君は幸せになるの?
ねぇ、たとえば、君を虐めたりしない、君に意地悪をしない俺がいたら、君はそれを選ぶの?
ねぇ、たとえば、毎日毎日飽きるくらい君にキスをして笑う俺が、君に必要だとしたら、俺はそれになれると思う?
ねぇ、たとえば、今の俺とまったく違う俺が、そこにあるとして。
君は、ねぇ、それで俺を愛してくれるの?
「ねぇ、さっちゃん」
「…?」
「さっちゃんのこと好きで好きで大好きで、大事に大事にそれはもう宝物みたいにして、さっちゃんにだけ甘い俺に明日なるっていったら、さっちゃんどうする?」
「…きもちわるい」
「ひどーい。じゃあ、そんな俺のこと、好きじゃないの、さっちゃん」
「少しも」
「えー…じゃあ、明日、なっちゃおうかー」
「……」
ねぇ、たとえば、俺は君しかいらないし、君は俺しかいらないっていってくれるだけで、俺が幸せだとしたら、君はなんという?
ねぇ、なんという?
「…もし、明日、晃二が、それ…なら。俺は、それ、でも…晃二が、いい」
「ふーん…後悔するよ?」
「少しも」
それでも君が俺がいいというから。
ねぇ、俺は、君が好きだよ。
だって、君は少しも。
嫌いだなんて。
少しも。
だから、俺は君にいうことにした。
「俺はね、変わらないよ。少しも」
「…」
「さっちゃんの知ってる、さっちゃんの俺だよ」
君が嬉しそうに笑うから。
「少しも、違わない」
俺は、たとえばではなく、そう決めたのです。
ねぇ、皐。