ばかっぴろい寮。
同室っていったって、部屋が三つ四つあるマンションの一室みたいなもので、各自部屋がある。
でも、マンションの一室みたいなものだから、共同のものはある。
冷蔵庫であったり、風呂であったり、トイレであったり。
だから、俺がこうして風呂に入ってて、髪の毛洗ってたら、背後から、堂々と乱入してくることもできなくはない。
そう、できなくはない。
いやなら内鍵かけろってことでね…。
「えーと…さっちゃん」
まぁねー貞操の危機がないんなら、鍵なんかかけたってしかたないじゃんていうか。
片方が先風呂はいるねーっていったら、それでいいじゃんなわけね。
でもねーいきなり背後から抱きつかれたら、あれ?鍵かけなきゃいけないのかしらっておもうわけですよねーはは。
もちろん俺、全裸。
さっちゃんも全裸。
あ、さっちゃんの匂いがほんのりするね。どんどんシャワーで流れてますけど。
「風呂、一緒に、……入る」
抱きついてからいうことじゃないと思います。はは。
「えーまぁ、ここまできてダメよ。とかいえないけどさー」
とりあえず頭洗うのに邪魔なので、退いてもらいました。
シャンプー流すと次はコンディショナーなわけですが。
さっちゃんはどいている間に入浴剤をお風呂に入れていました。お風呂は驚くほど甘い匂いで満たされた。え、それ、なんの入浴剤?と、風呂を見つめると、さっちゃんも適当にとってきていれたらしくて、粉の入ってた袋を眺めてぽつり。
「苺ミルク」
ああ、今流行の食べ物入浴剤ですね。たべられませんってやつ。
見事な薄ピンク色のお湯がすごく甘い匂いを漂わせる。あー…甘いなぁと、コンディショナーを取り出して溜息。
さっちゃんがこっちをむいて、手招きをする。
「何?」
「晃二のかみ、あらう」
どうしようかなぁ。って迷うくらいならやってもらおうとおもって、一度身体を流して湯船にはいると、さっちゃんに頭を任せる。
あらうっていうかまぁ、コンディショナーだからねぇ。
髪をすくように手に広げたコンディショナーを広げていく。正直気持ちいい。
さっちゃんは意外と真剣にその行為をしている。
あっという間に、広がるコンディショナー。
さっちゃんがまだちょっと物足りなげにしているが、まぁ、それはね。
「今度はさっちゃんの髪あらってあげよーか」
なんて、言っただけで、嬉しそうにかわる。
単純だよねーそういうとこねー。
俺の変わりに湯船に入ったさっちゃんの髪を洗う。
「お客さん、痒いところはありませんかー?」
なんてサービス精神でいうと、さっちゃんが若干眠そうに答えてくれた。
「な…い…」
ま、眠いんだろね。
生徒会長の仕事忙しそうだものね。
「寝てもいいけど、溺れないでねー」
「んー…」
半分、睡魔に犯されて眠そうな返事をしているさっちゃんは、心底虐めたくなる。
うつらうつらと舟こいだりしてるときとかびっくりさせたくなる。アレ。
「さっちゃん、甘い匂い、するねー」
「んー…」
眠くて生返事。
寝起きとかはこれが多いよ。
「食べちゃいたいねー」
「んー…」
俺の言ってること、きっと半分も理解できてないよ。あたまには入ってきてるだろうけど。
「食べてい?」
「んー…?」
生返事でも不思議そうにしてる。
俺は手を止めて、何処が一番効果的かなって見る。
やっぱ首かなぁ。でも、首はちょっと後が面倒だから…肩、かな。
そう思ったら、俺はさっちゃんにこういう。
「頭流すから俯いてー」
くるりと回転させて頭を下に向けさせる。
湯船に泡がはいらないように身は乗り出してる状態。
さて、あとは、実行するだけ。
シャワーを頭にかける前に、見えてる肩にがぶりと。
「……ッ!?」
痛みにさっちゃんが顔を上げた。
あーサイドから噛み付いてよかった。
俺はそんなことも気にしないでさらに歯をじんわりと食い込ませる。
鼻には甘い匂いがつよすぎるけど、口の中は鉄の味がする。
「こうじ…ッ」
どんな顔をしているのかみてみたくて、ようやく肩から顔を離すと、顔よりさきに肩が目にはいった。
風呂にはいって血流がよくなってたせいで血がよく出ている。
俺もよくこんなにかんだなぁ…と感心するほどだった。
「さっちゃん眠そうだったから。起きれたでしょ?」
これで起きなかったら、俺は確実に喉いってたね。
「…コレ…何か、違う…」
まぁ、起すっていうのとは何かちがうよね。納得いかないよね。
知ったことじゃないけど。
「んーそっかー何かちがうかーふふーそっかー」
いいながら、しっかり流す。
もちろん、肩も流すよ。
化膿なんかしたら、あとでいじって楽しんでしまいそうだからねぇ。サド?鬼畜?なんとでもいえばいいじゃん。
さっちゃんの唖然とした顔と、痛そうな顔ったら、たまんないよ?
「さてと、コンディショナーするよ。さっさとして、その怪我どうにかしないと、化膿しちゃうかもよ?」
なんていうと、さっちゃんたら、かわいい。
「化膿…すれば、いい」
それはゆっくりしたいってこと?
それとも、俺に虐められたいってこと?
…俺の痕を残したいってこと?
…昔つけちゃった傷、みたいに。
「それで、残るな、ら…すれば、いい」
さっちゃんてば欲張りだから、全部なのかもねぇ?
「晃二」
コンディショナーちゃっかりさっちゃんの髪に広げて、俺は笑う。
さっちゃんから、唇にキスがきた。
あれ、さっちゃん密かに興奮してるね?
あらやだ、お風呂場でナニしちゃうの、さっちゃん。
「ここじゃダメ。この傷残したくないし」
だって、この傷、あの傷と被っちゃうからねぇ。
傷作るなら、別のところにしようねぇ。
たとえばピアスとか、見た目もオシャレな傷になるんじゃないかしら。せっかくだから、人に見られて恥かしいとことか。
そしたら、さっちゃん、人前で裸になれないねー。
と思ったらしたくなってきた。
はて、今夜は眠れないかも。