初めまして、貴方が好きです。


「おお?さっちゃん見事ねぇ…」



微笑。
はじめに申しておきます。
僕は貴方の好きな人を知っています。
学園では知らぬものはいないでしょう。
僕も、よく知っています。
朝から夕方まで、バタバタと忙しなく、そのくせ、人の輪にすんなり入るような、とても不思議な人ですね。


「ラブレターって、下駄箱から溢れて雪崩をおこすものなんだねぇ」
「…これ…ほとんど、ファン…レター…」
「あらま。それにしたって、毎日だろ、それ」


貴方と一緒にいるところも、よくみかけます。


「…そう」
「何、ちょっと詰らなさそうに」


最初に申しました通り、僕は貴方が好きなので、よく貴方を目で追いかけます。
そうすると、どうしても貴方の好きな人も、自然と目にすることになるのです。
貴方はとてもとても、あの人がお好きなのですね。 見ていて、すぐ解ります。
だから、こうしていても、貴方にお付き合いしてくださいとは、とても言えません。

ですが。


「…晃二、にも…手紙…」
「ああ、これぇ?嫌がらせとー……あ、これ、本命手紙かも」


余計なお世話だとおもうのですが、悪いことはいいません。
あの人はやめたほうがいいと思います。
僕がどうこうする話ではないということはわかっています。
ですが、どうしても、あの人は…貴方のことを好いているようには、見えなかったのです。


「……」
「何?何々?嫉妬〜?やだ、もう、さっちゃんかわいー」


悪いことはいいません。
あの人はやめておいたほうがいいと思います。


「さっちゃん拗ねない、拗ねない。いいこと教えてあげるから」
「……なに…?」
「たぶん、これかなー…さっちゃんへの本命手紙」
「……それが?」


…ある時まで、そう、思っていました。
けれど。


「俺ね、結構、心の広さ、微妙なサイズなんだよね」
「……」


白い、たぶん、僕と同じように貴方を想って書かれた紙切れが小さくなって落ちたのを見ました。
酷いと思う前に、適わないなと思ったんです。


「俺もさー、妬いたりするよ?だって、さっちゃんだからねー」


あの人の行為より。
あなたの、嬉しそうな切なそうな、あの顔を見たときに。


「ごめんねぇ。手紙。でも、応えないんでしょ?」
「…ことわりには、いく」
「そっかー。じゃあ、ホント、手紙ごめんねぇ?俺、今、急激に心のサイズが小さくなったから、あとで、ご機嫌とって下さい」


あの人がしそうもなかった、嫉妬をしたくせに、自ら、手紙を破ったくせに。
あなたの思いを慮るところに。


「…ん。俺の…機嫌も、…とってくれる?」
「…あ、これ?うん、とるよ?当たり前ジャン?」


二人して笑って、まるで思い出したかのように突然、だけど、自然に、キスをしたことに。

適わないな。と、思ったのです。


「じゃあ、俺、街寄ってくから」
「ん」
「また寮で」


それと同じように、自然と別れていく貴方がたを見ながら、僕はこうして、手紙を書くことに決めました。
たとえばこれが、あの手紙と同じような末路を辿ろうとも。
この想いが終わることが、辛く、切なく、憎らしく、涙まで出そうになるけれど。
これが、貴方に届いたのなら。
僕は、あの夕方を思い出して笑むことができるのです。