応援団に力を入れすぎたせいか、自身の学園の体育祭に気が向いてなかったというのは、事実だ。
仕事に手抜かりはなく、いつも通り完璧だといえたが、彼自身が出る競技を忙しさと面倒くささをおもって、人任せにしたことが、彼の現状を作っている。
「…色物万歳だな」
風紀委員長である友人が、彼の出なければならない競技を見て呟いた。
彼が担任に言われたことは、こうだ。
「どんまい」
ノーネクタイに柄シャツや、派手な色のシャツのスーツ。教師とは思えぬ髪色の教師は、彼の肩を叩いてふ…と笑った。
諦観が拭えぬ笑みだった。
「人に任せるんじゃなかった」
彼がそう呟くのも当たり前だった。
クラスででなければならない競技は最低二つ、最高三つ。
つまり、だいたい二つでていればクリアだあるはずなのだが、彼は三つ出場を余儀なくされていた。
借り物競走、仮装リレー、障害物競争。
その三つは、第二学年色物競技としての名を欲しいがままにしている三つだった。
「どっかの双子が楽しそうに借り物の名前を書いていたことしか覚えてねぇ…」
いったいなんの借り物があるか、などということは覚えていないどころか、一つも知らないのだが、毎年借り物にはろくなものがない。
仮装リレーなど、仮装で走るだけであるのだが、走者はまずくじ引きをして仮装を決める。毎年女装の割合が高く、女装ではなくてもろくな仮装がない。
最悪なのは障害物競争で、始終平均台を走らせ、周りに走者を落とそうとする仕掛けを用意した年もあれば、ドロ、ローション、ドロ、サンオイル…とヌルヌルドロドロとろくに走れないコースを用意されたこともある。
この仕掛けはなぜか学園の整備課がつくっている強敵で、前年度は、それが終わったら100万円とかもらえるのか?というサバイバルアスレチックだった。
普段の鬱憤をここで晴らしているようにしか思えない障害物競走はここのところゴールテープを切ったものが一人もいない。
「そうか…だが、俺も他人事じゃねぇわ…」
色物競技のうち、二つ…つまるところ、やらなければならない二つの競技が風紀委員長も色物なのだ。それでも、三つあるより随分マシだ。
しかし最悪は避けられたのだから、かなり助かったといってもいい。
学園の生徒のトップたる二人は、二人して溜息をつくしかなかった。
そのせいなのか、彼は思わず宣誓で、こういった。
「野郎ども、俺はてめぇらなんかに負けねぇ…!」
なぜかグラウンドは非常に盛り上がった。