彼の通う白鴬学園には古くから付き合いのある学園がある。
それが、高雅院雅の通う学園だ。
白鴬の生徒はその学園をこう呼ぶ。
成金学園。
一代でのし上がったとか、パチンコホテルの経営でという親を持つものや、伝統芸能以外の芸能関係、主に写真やテレビに登場する人間を親に持つ者が多い学校で、ごく少数、由緒正しいという言葉を冠する家の出の生徒がいる。
他にも多くの特殊な特待、奨学制度があり、お隣のAP学院と交換授業などをしているため、学ぶ機会は他よりも多いだろう進学校。
よく遊び、よく学べを掲げるその学校を、レベルが低いという白鴬の生徒は総合学力でその『成金学園』に劣る。
それをよく『レベルが低い』といえたものだ。と、彼は溜息をついた。
白鴬でもトップレベルの家柄と財力、容姿、成績をもち、『成金学園』でもトップレベルといわれる学力を有するために努力を惜しまなかった彼は、白鴬の生徒がいったいあの学園になんの文句があるんだと、文句もいいたい心持ちになる。
彼とてわかっているのだ、自分が持ち合わせていないものはよりよく見え、そして矜持をくすぐるものなのだと。
結果、白鴬の生徒は顔面レベルが低いがり勉集団だといって、昔から行われている応援団の派遣を嫌がる。
生徒会がいくと一言いえば、お近づきになりたいから一緒に行きたいと都合のいいことを言い始める。
うんざりだといえばそうだし、ここまで来てしまえば、そういう特色なのだから仕方ないと思える。
皆が皆そうではないと知りながら、目立つのはいつだって悪い意見であるし、そう、仕方ない。
「女装チアリーディングだけは避けたい」
過去の資料をめくると、なんの嫌がらせか、異性すらくる学園の体育祭でそろいもそろって女装で応援だ。
恥かしくないのだろうか。それとも、もう、そういったことをお祭り騒ぎだ楽しもうと思っているのだろうか。それならば、大変潔いことだ。
お祭り騒ぎだ楽しもう。といえば、一年前の応援団が白鴬にきたときだった。
それはもう似合わないものから似合うもの、ある意味似合っているものまで様々できた応援団こそ、それだった。
いかにも、あの学園らしいパフォーマンスといえた。
「しかし、生徒は皆、そのつもりですよ」
「…んなもん、無視して、俺は黒い学ランがきてぇんだよっていっときゃなんとでもなんじゃねぇの」
副会長の外村が、なるほど。と頷いた。
そこはなるほどでいいのか、いや、普通はよくないだろう。なぜ、そこで誰も止めないのか。なぜそれがこの学園では真理たるのか。
発言した本人すら、疑問を抱くが、そうなるのなら、別にいいかとも思ってしまうあたり、慣れなのだろう。
そうして、彼は難なく黒い学ランの応援団を結成し、高雅院の学園に行くことととなった。
結果としては、悪くないどころか、手まで振ってくれたうえに、なぜか高雅院に連れられてグラウンドまで走ってしまった。
という思い出まで手に入れてしまった彼に不満は一つもなかった。