古城が寮に戻ってきてすぐ。
俺の部屋に尋ねてきて、紙袋を突き出した。
何が入っているか解らない白くてでかい紙袋に入っていたのは、タッパーだった。
出しても出しても、タッパーだった。
その数四つ。
すべて不透明なタッパーだった。
「…飯?」
「いや」
古城が首を振るので、俺は最後に出したタッパーを開ける。
シュークリームだった。
白い粉砂糖がまぶされたものから、白鳥の首がついたもの、チョコレートがかかったもの、シューが口をあけ、フルーツを見せているもの、きっちりつめて12個のシュークリームが鎮座していた。
芸術の域だ。
俺は冷静に蓋を閉め、それを机のうえにおくと次のタッパーをあける。
そこには色とりどりの秋の味覚がのったタルト、チーズタルト、季節は外れるがイチゴタルト、チョコレートのタルト、抹茶と小豆という和風のタルトまで、その数、やはり十二個。
もうすでに何から食べたらいいかわからない。
冷静になりきれぬまま蓋をしめ、次のタッパーに取り掛かる。
モンブランにも種類があるものだ。
栗だけでも茶色か黄色かという違いがあるというのに、抹茶だの芋だのイチゴだの…もう、モンブランがわからない。という体であるが、うまいのだから仕方ない。定規ではかったかのような四角いモンブランは1ダース。
太るだろうな…とニヤニヤしそうになった。やばい。
そして最後のタッパーには全部種類の違う三角のケーキが入っていた。
ショートケーキにガトークラッシック、オペラ、チーズケーキ、抹茶と小豆のケーキ、フルーツケーキに洋梨のケーキ、その他諸々、お前はケーキ屋か。とつっこんでやりたい。というか、どこかで見たことあるケーキが並んでいる。
それは円形になってピザもびっくり全種類違う、12ピース。
しめて、四ダースの甘いものを目の前に、思わず顔を上げた目の前には、タッパー四つと紙袋を前に、若干、どうしていいものかバツ悪げな様子の古城。
「……シュークリーム、作る話だったろ」
俺は、シュークリーム1、2個でも、嬉しかったと思う。
これはやりすぎだろって、ドン引きしてもいいくらいだったと思う。
おそらく、俺は甘いものが好きすぎた。
そして、目の前の古城が、どうにも目の錯覚で可愛く見えた。
ダメだな…と思ったときには、タッパーをもったまま、古城の唇貪っていた。
「…甘ぇ」
「……味見…したから…」
なるほど、カスタードの味だ。
タッパーをそっと置き、もう一度、軽く口付けて、口角を上げる。
「これは礼にはならないか」
「なんねぇよ…けど、久々」
してぇ。という言葉は古城から出なかった。
俺もしたかったからだ。