トノとプレゼント。


山の中の学園内にもクリスマスと冬休みの到来を思わせる、12月がやってきた頃、彼は、悩んでいた。
高雅院雅にクリスマスプレゼントを買うか否か、渡すか否か。
買う、まではいい。渡せなくても、買っておけば、いざというときに対処できるし、自分で使えばいい。
けれど渡すとなると、彼は思うのだ。
嫌いとまでは言わない。それなりに好感をもってはくれているだろう。しかし、好きとはいいきらない、しかも恋愛感情を持っている男からのクリスマスプレゼント。下心というか、気持ち悪くはないだろうか。
それを考えると、渡すか否かどころか、買うか否かも迷い始めるのだ。
どうしてこうなのだ。
普段の俺様何様と言われる傲慢なまでの邁進力と決断力はどこへ行ったのだろう。
彼はパソコンを前にしてため息をつくしかない。
12月にはいってからというもの、こうしてインターネットで良さそうなものを探しては、お気に入りを作り、フォルダまで新しく作ってしまった彼は、少し寝不足だ。彼の親衛隊などその様子を見て、年末で生徒会もお忙しいんですねと勝手に勘違いしてくれている。クリスマスプレゼントをきめかねるどころか、買うことすら悩んでいて寝不足であるだなんて、風紀委員長くらいしか知らないことだろう。
だいたい、クリスマスは平日だ。
冬休みもまだであるし、彼が直接、高雅院にプレゼントを渡すことはできない。
もうすでにフォルダに放り込んだサイトが二十を超えていた。
普段の彼ならば、クリスマスプレゼントくらいで悩んだりはしないし、クリスマスというイベント自体も、そう言った産業的な娯楽または商戦の一つだと捉えている。
今年が特別なのは、風紀委員長が珍しくクリスマスを楽しみにしていて、その理由がクリスマスディナーがあるから。という食い意地のはったものであっても、それがなんだか、彼には羨ましく思えたからだ。
彼が高雅院とクリスマスを過ごすのは無理だ。
けれど、風紀委員長がどうみても夫婦にしか見えない同室者とクリスマスを一緒に過ごすことは可能なのだ。
想いの違いであるとか、状況の違いであるとかをなしにしても、羨ましい出来事だと、彼は思ったのだ。
ならばせめて、プレゼントでもおくろう。
誕生日プレゼントももらってしまったことだし、お礼といえば。
彼はそう思って、毎晩毎晩パソコンと向かい合った。
けれど探せば探すほど、彼は迷うのだ。
本当にプレゼントしていいのか、よくないのか。
買うべきか買わざるべきか。
答えは出ない。
優柔不断にも程がある。
彼は自分自身を笑った。
らしくない。
こうして悩んえしまうのは、きっと彼が高雅院を特別だと思っているからで、特別の種類が現在と違いさえすれば悩むこともないのだろう。
「もう、諦めりゃいいのに」
いつだったかに諦めないとか言ってしまった自分自身が恨めしい。
ここのところ、彼にとっていいことばかりが続いていたから、彼は忘れようとしていた。
彼が一度告白し、振られたという事実を。
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