ビスケット!3
生徒会長は、風紀委員会ではアイドルのようなものだ。
今期の生徒会長になってからというもの、生徒会長が誰かに惚れられたという話はよく聞くのだが、生徒会長自身の身持ちは堅く、いつも、風紀委員の元に書類を自ら届けにくる。
書類を届けるたびに風紀委員たちに愛想を振りまいていくため、風紀委員たちは、風紀に兄貴、癒しの生徒会などと言っている。
昔は何をバカなことを言っているんだと思っていたのだが、最近は、どうも、その言葉バカできない。
どうも、生徒会長がかわいく見えてしまうのだ。
兄弟が世話になっているとわざわざ生徒会室に顔をだし、兄を捕まえたといってはつれていき、わざわざ俺がしなくてもいいことを、俺がやってまで、会長に会いに行ってしまっている。
俺は、思わずため息をついた。
「あ、兄貴、俺何か失敗したっすか!?」
「いや、悩み事だ。つか、兄貴はやめろ」
ヤンキーの襟首捕まえて引っ張りながらのため息だった。
ヤンキーは現場で殴ったため、すでにぐったりしており、おとなしく俺についてきてくれていた。
「あ……委員長が、悩み事!?あの、人の話ばっかりきいて笑い飛ばす兄貴肌が!?」
そんなに俺の兄貴は定着しているのだろうか。
俺はこんなに愉快な人間だというのに、何故だろう。理解したくない。
「大したことじゃないんだがな」
「ぜんぜん!ぜんぜんきくっすから!言ってみてくださいっす!」
風紀委員の一人がえらく興奮して俺に尋ねる。
ぐったりしていたヤンキーも、いつの間にかシャキッと背を伸ばし、こちらの話に耳を傾けていた。
俺はヤンキーのシャツを手放すと、もう一度ため息をついた。
「最近なんか、会長がかわいく見える」
そう言った瞬間に、俺の傍らにいた風紀委員の一人は、風紀委員室に向かって走り出した。
「皆のしゅーう!お寿司!お寿司を用意するのだっ!ちらし寿司っ!あ、紅白まんじゅうでもいいっ」
大変喜ばれているというか、祝われているようで、廊下を走りながら声を上げる委員を注意することもできない。
「い、委員長……っ、あんた、あんたやっとか……っ!」
先程までぐったりしていたとは思えないヤンキーが今にも感動で涙を零しそうだ。
俺は二人の反応にどうしていいか解らず、助けを求めるように生徒会室があるだろう方向を見た。
するとタイミング良く、兄が脱走したのか、弟の兄をののしる声が聞こえた。
なんだか置いていかれているこの状況に、その声は大変懐かしくも温かく聞こえた。
今日も、平和だな。
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