オレオ?5
この頃は一人で生徒会室で用事をするということがあまりない。
最近では、アニキ野郎が恋に落ちようがないくらい生徒会長を奉っているから大丈夫だという理由で書記におさまり、そのうち後輩から補佐でも引き抜いてこようかという話までしている。一人で黙々と机に向かっていた頃と比べれば順風満帆だ。
唯一つ問題があるとすれば、俺自身である。生徒会長だというのに風紀委員長に恋していて、段々その気持ちが落ち着きを見せなくなってきた。
俺の気持ちが落ち着かないのは、風紀委員長の兄弟が生徒会役員になってしまったことにより、風紀委員長との接触が増えてしまったことと、もう一つ理由がある。風紀委員長がここのところ、俺を構うのだ。
「なぁ、会長。一緒に飯くわねぇ?」
本来ならばクラスも違う風紀委員長は、休み時間は愚か昼休みでさえ生徒会に用でもなければ会うことがない。それにも関わらず、風紀委員長が俺のクラスまでやってきて、そう言って笑うのだ。
クラスでは、風紀委員長の笑顔を心待ちにして売店に走るのも、食堂に行く足も止めて、クラスにやって来るまでのろのろと教科書を片付ける生徒もいる。俺は風紀委員長に毎度毎度なんと言っていいものか悩む上に、気がつけば風紀委員長が来るのを楽しみにしていた。
「……風紀委員長、昼は毎日食堂で食事だということを知っているだろう?」
素直じゃない言葉が零れ落ちたが、クラスの生徒たちに風紀委員長の笑顔を見られるのもなんだか癪だ。それは素直じゃないが素直な言葉であった。
「いや、反応が可愛くてついついな。だが、他の生徒がお前の姿見てぼんやりしてやがるから、そろそろ見せ付けるのも見せるのも止めておくか」
「してねぇよ」
いつものことながら、魔性というようなことを言われると否定の言葉しか出て行かない。本当のことをいえば、風紀委員長の笑顔見たさ半分、俺の様子を見たさ半分ではあると思う。
それにしても、風紀委員長は何がどうして、俺に構い始めてしまったのだろう。調子に乗って、好意があると考えてしまっても仕方ないことをされている。風紀委員長は友人がいないので、もしかしたら俺を友人として可愛がってくれているのかもしれない。
「そうか?」
おざなりに頷いて立ち上がると、風紀委員長がまた笑った。
「でも、他の連中には見せたくねぇの本当だしなぁ……」
しみじみと呟かれた言葉に、顔が赤くならないうちに教室から脱出できたのは幸いだ。しかし、廊下にいる生徒には見られてしまっただろう。
しっかり後ろから風紀委員長が歩いてくるのを確認しながら食堂へと向かっているのだから、俺の恋心もちゃっかりしていた。
「本当、可愛いよなぁ……俺、どうかしたか……?」
また呟かれた言葉を耳に入れてしまい、むしろ俺がどうかしてしまいそうである。
その日も昼食は味がしなかった。
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