六月の、終わり。
学校の片隅。
青い絵を何度となく見に行って、眺めて。
六月展示会が終わろうという頃。
その絵は、別の絵に変わった。
タイトルは、『蜜』。
それは森の絵だった。
一つのおおきな雫に、パステルで描かれた花と草。
雫の底ははちきれんばかりに色が溢れ、重たくて、今すぐ落ちてしまいそうな印象。
そして、その雫の中、一つ、寂しくも自由に飛んでいく鳥を追いかけるようにして蝶が舞う。
綺麗だなと思う。
ファンタジーだなと思う。
でも、俺のみたい絵じゃない。
描いているのも三谷じゃなかった。
「あ、良かった。今日もいた…!」
振り返ると、なにか大きな袋を持った三谷が俺の前に現れた。
俺に用なのだろうか、と首をかしげると、三谷は俺にその袋を差し出した。
「貰ってください。なんか、よく、みてくださってたみたいですから」
袋を受け取って、中をみると、そこにはカンバス。
青。そう、俺が好きな、青。
「これ、展示終わったら、すぐカンバスの奪い合いで潰れちゃう絵で。なんか、みてくださってるの、嬉しかったんで」
俺の大好きな青。
俺は、それが俺の手にあることが嬉しくて。
でも、勝手に外したりしたら怒られるんじゃないだろうか、と口を開こうとすると、バタバタと走る足音。
「三谷ー!絵どこにやったー!」
「やっべ。ええと、書記様!とにかくそれもって逃げてください!」
俺は三谷の言葉のまま、カンバスをもって、逃げた。
あとから、三谷が怒鳴られているのが聞こえた。
なにか笑えた。
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