光が射す。
雲の隙間、あたりを染める薄紫。
夕焼けなのか、朝焼けなのか。
隠れた陽がどこからともなくさしている。
しかし薄暗く、薄く広がる紫を頼りにするには寂しい。
俺が急に泣いたものだから、三谷が慌てた。
「え、え、急にどうしたの?え、ええ……てぃ、ティシュいる?」
油と絵の具で汚れた手で、パレットはおいたけれど、手に持った筆はそのままに、三谷は何かを探して手を宙にさまよわせた。
俺は首を振って三谷の手を止める。
「絵、綺麗。寂しい」
「ほめられてるのは解ったけど、寂しいってなんすか、書記様……」
俺は何とか言葉を探す。
「絵、寂しい」
「え、色数少ないってこと?」
俺は、首を振り、もう一言付け足す。
「雰囲気」
「あ、雰囲気かー。え、まさか、それで泣いたの?」
俺が頷くと、三谷が何度か瞬きをした。
その後、三谷が嬉しそうに、照れくさそうに笑った。
「うわーやべぇー!ありがとう。完成したら、あげるね、この絵!」
「ちょっと、おとなしくきいてたら、またあげるとか!書記様も頷かない!もーもー!それは美術展のあとは学園の廊下にかざるの!決定してるの!」
「えー」
三谷が唇をつきだして不満を口にするので、俺は、もう一度頷く。
「見に行く」
「うーんもー!書記様最近かわいく見えてきたんだけどー!」
「いや、元からこの人かわいいじゃんか。ねー」
「ねー……?」
俺は首を傾げなから、その言葉に同意するように繰り返す。
実際のところ、俺は可愛くなんかないんだけれど、三谷が同意を求めるから、ついうっかり、同じように行ってしまったのだった。
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