#333366


三谷に会えなくなってどれくらいたったか。
よくわからない。
部屋には三谷の絵があるし、学園の玄関ホールにだってある。それに下駄箱には毎日、三谷の絵が入れてあった。
でも、三谷には、会えていない。
休み時間に会うことは出来ないし、放課後も会えないなら、いつ会えばいいのか。
考えた。学校で会えないなら寮で会えばいい。
そう思ったけれど、親衛隊の体調にとめられる。それは三谷に迷惑らしい。
俺は、三谷に会えなくて寂しい。
毎日毎日届く落書きは、嬉しいけれどとても寂しかった。
「寂しい」
今日も下駄箱を覗き込んで、三谷の封筒を探して、呟く。
三谷の封筒は恋文と混ざっていてもよくわかる。そっけなくて、ちょっと汚れているから。
見つけ出し、その場で封筒から絵を取り出す。わざわざポストカードに描いてくれる落書きは、今日は青と緑のボールペンで描かれた海だ。
三谷はよく海の絵を描く。そうでないものも描くけれど、このポストカードをいれてくれるようになってからは海が余計に多くなった。
「あいたい」
ポストカードで海を見るたび、思い出す。
大きなカンバス、油の匂い、ちょうしっぱずれた鼻歌と、楽しそうな顔して振り返る。
美術室に行けば会えるだろう。
三谷の勉強を邪魔したいのならそうすればいい。
寮で探せば見つけられるだろう。
三谷が他の生徒に呼び出されて迷惑してもいいのならそうすればいい。
わかっているから、できなかった。
だから、会えなくなってからどれくらいかは、わからない。
数えることをやめたから。
ポストカードを鞄に入れて、寮に向かって歩き出す。
足は重い。




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