タスク×アオ




 クリスマスは何故、普通の日なのだろう。
 俺は、教室から廊下へ飛び出しながら思った。
 いや、クリスマスという日が日本人にとってお祭り騒ぎであるのがいけないのだ。せめて俺がクリスマスとは何の関係も無いような海外の人間に生まれていれば良かった。しかし、日本人に生まれてしまったのなら仕方ない。
 ならば、クリスマスも長期休暇に含まれてくれていれば問題ないのではないだろうか。そうであれば、俺は白い袋を持った赤い帽子のあいつに追いかけられることなど無いのだ。
 休日ならば家まで押しかけてきてお泊りだと喜びそうなものだが、そのときは家にいなければいい。
 こんな日に授業などあるからいけないのだ。なければ、居場所を簡単に特定され、迫られることなど無い。
「クリスマスくらい付き合えよ」
「ハロウィンも付き合ってやっただろうが!」
「それはそれ、これはこれ。不法侵入してプレゼント置いても良かったんだがなぁ」
 そういって俺のベルトを掴み離さない宗崎を睨みつける。
 追いついてすぐにベルトを捕まれたのだ。足は宗崎のほうが速かった。
「やめろ、寮でまで俺の安眠を妨害するな」
「プレゼントは、お、れ。とか、やってみたかったんだが」
「本当にやめろ。勘弁しろ」
「そんなわけで、プレゼントだ」
 話を聞かず、宗崎は白い袋を俺の手に持たせる。玩具屋の白い袋からは、カラフルで三角の何かが透けて見えた。
「パーティの招待状はコレだ」
 プレゼントの白い袋から開放された手で、俺のブレザーの胸ポケットに名刺サイズのカードを入れる。その際、それとなく触られたような気がするが、気のせいにしておきたい。
「それ、被って来いよ」
 うきうきがノンストップと言った調子で、宗崎は漸くベルトから手を離して去っていった。
 俺は招待状の示す会場を避けるべく、胸ポケットから招待状を取り出し驚愕する。
「……結局、不法侵入するんじゃねぇか……」
 俺の部屋だった。
 しかし、俺には同室者もいたはずだ。
 もし、このパーティーにタダシも噛んでいるというのなら、ただじゃおかねぇと心に決めた。