だから好きって言ってるだろ!

「お前なんざ待っちゃいねぇよ。生徒会の仕事が長引いただけだっつうの」
売り言葉に買い言葉。
あいつが可愛げのないことをいうものだから、ついつい喧嘩腰な態度をとってしまった。
「会長様はろくに仕事もできねぇってことか?」
本当は、生徒に任せるには多すぎる生徒会の仕事をこなすあいつのことは、尊敬すらしているし、ろくに仕事ができないだなどと思ったこともない。
たとえ仕事が長引いただけでも、今、この場にあいつがいるだけでうれしいはずであるのに、俺はたった一言で自ら気分を台無しにした。
「…、風紀委員長こそ、お遅いお帰りで?」
負けずと返したあいつは、俺を鼻で笑うというオプションまでつけてくれた。
負けず嫌いだということを知っているから、その仕草は憎たらしくも可愛く見える。
ひどく素直ではない俺は、あいつに同種の笑みを向ける。
「てめぇとは違って、遅くまで身を粉にして働いているだけで、無能とは無縁だ」
別にそんなことがいいたいわけではない。
お疲れ様、今日も大変そうだったな。くらいの軽い挨拶がしたかっただけなのだ。
それを開口一番、偶然廊下で会ったあいつに、『会長さまは1人で廊下も歩けねぇんだな。だっせ』から始まり、『俺について行けば、大抵追い払ってくれるもんなァ?金魚の糞かよ』などと憎まれ口を使ってしまった。
実のところ、あいつは会長で人気があるのだから、1人でこんな暗い廊下を歩いて欲しくなかったし、できたら俺と一緒にいてもらいたかっただけなのに、何故素直にそれが言えないのか。
そうして、なるべくして口喧嘩のようなものになってしまう。
「ちょっと、何してんですか会長。喧嘩してねぇでさっさと帰りますよ」
「あ?こいつが先に吹っかけてきたんだよ」
「はいはい。よかったよかった。あ、風紀委員長、おつでーす」
「ああ、お疲れさん」
あいつでなけりゃこんなにも簡単に言えるのに。損な性格だ。
「…俺とは随分態度がちげぇじゃねぇか」
俺は何をわけの解らないことを言っているといった態度であいつに答えた。
「なんでてめぇに態度変えなきゃなんねんだよ。自意識過剰じゃねぇの?」
こんなことだから、生徒会長と風紀委員長は仲が激悪で、顔をみたら喧嘩をするとか言われてしまうのだ。
「自意識過剰じゃねぇよ。てめぇこそ自意識過剰なんじゃねぇの?」
「会長、もういいでしょ。行きますよ。あ、風紀委員長、また明日」
副会長があいつを諫めながら、挨拶をしてくれた。
「おう、じゃーな。ついでに会長さまも」
俺にしては上出来な挨拶だった。
それを評価してくれたのか、いやな笑みを浮かべていたあいつが、一瞬ポカンとして、挨拶を返した。
「さっさと飯食って寝て、寮で俺に顔見せんじゃねぇよ」
「てめぇこそ」
始終この調子じゃ嫌われて当然だよな…。とあいつと副会長の背中を見送った。
副会長が羨ましかった。