金のエンジェル



告白なんてする気はなかったから、聞いたのだ。
「好きな奴、いんの?」
「いるよ」
ああ、そっか、じゃあ、いいか。
なんて思うのは、自分に対して薄情なのかもしれない。
「告白はしねぇの」
自分自身のことを棚に上げて聞くと、そいつは笑った。
「できない」
ふーん、そっか。
「俺もするから、オマエもしろよ」
「…おまえがするんならな」
しないだろ?と、油断しきって馬鹿にした笑いを浮かべる。
すんなりと口から滑り落ちる。
「好きだ」
「…は?」
「俺がすきなの、オマエ」
「……は?」
「からかってねぇよ。すきなの、オマエ」
知らなかっただろう?と笑ってやると、そいつの眉間に、皺。
知るわけないと、呟いた。
「それで、告白、しにいくんだろ」
予想はできている。
「……好きなら、いわないだろ、普通…」
「普通じゃねぇし。言ってこいよ。俺は振られたのをジクジクせめていくから。ほら、当たってくだけて来い」
とは言うものの。
両想い。知ってる。
あーあ…振られたなぁ。




銀のエンジェル



屋上、貯水タンクの前、三回手を叩いて、『両想いになれますよーに!』といえば、好きな人と両想いになれる。
誰が始めたお呪いかはしらないが、貯水タンクの裏で寝ている人間には迷惑なお話で。
「両想いになれますように!」
今日も今日とて誰かが、その想いをぶちまける。
異性はいないこの学校で、お盛んなことだ。
五回に一回。
ここで名前までぶちまけていく奴がいる。
「畑山くんと両想いになれますよーに!」
ちなみに。
畑山とは二年B組のちょっと笑窪がかわいいと評判の男前。
この校舎の屋上は、昼ともなれば昼飯を食う生徒で賑わう。
ソレをなんとはなしに声だけで判断して、誰がきているかを判断している。
けして俺のような貯水タンク裏で寝ているような人間は来ないため、俺はねぐらとして活用している。
そして、今回お呪いをしていった奴は、ひーくんと呼ばれているやつで、本名は日村圭(ひむらけい)という。
俺は知っている。その、ひーくんと畑山くんは両想いだということを。
なんとこの屋上。
俺のような人間がたまらず、昼休みはB以下E以上のクラスの生徒で賑わい、二時間目以外のその他の時間はそれらのクラスの生徒のサボり場となっているのだ。
二時間目は俺がこの屋上の貯水タンク裏ではない場所でサボっているため、誰も近づかない。
まさか、その俺が貯水タンク裏にずっといるだなんてことは誰も知らない。
「あー…畑山のサボり摘発して、日村に掃除でも手伝わせるか」
そのあとどうなるかなんて俺はしらねぇよ。



金のエンジェル
振られんぼ会長。
美形で成績優秀。
交友関係も広い。
誰もが羨む人なのに…。


銀のエンジェル
サボり風紀委員長。
特権があるのをいいことにサボり。
朝から人気がなくなるまで、貯水タンク裏。
二時間目だけ外出。

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