早々に倒されて居なくなるには強い奴に攻撃されるか、大勢の人間に攻撃され、身動きできなくなるのが早い。
と、いうわけで、まず良平を見つけ出し、一発入れてみた。
良平に使われていない青磁はうまいこと動き出してくれるだろうか。ドッキドキの展開。良平に最初から言いつけられていたら動かないので、他にも保険を用意した。
人気の高い一年連中に一発いれる。
二年連中で変装後人気が高いやつらは、崇められたりするものの、武器を持っていたら魔法使いが、魔法使いなら武器を使う連中が支持される場合が多い。
そのため、武器系のお祭りである今回のトーナメントでは、人気ものを狙ったところで襲ってくる人数はたかが知れている。
三年生などはクールで、人気ものだろうと冷静に判断してくる。…できない人間もいるのだが、クレイジーな追われ方をしたりするので相手にしたくない。
そんなわけで、二人目は一年生の人気ものを撃つ。
もちろん、戦闘が不利にならない程度。
良平は遠慮なく肩に一撃いれた。そうでもしないと青磁も動かない。主人の矜持もあるし、ちょっとの怪我判定くらいで動くと、良平に怒られるからだ。
普通に怒られる分には、青磁も気にしないのだが、接触禁止令をはじめとする様々な罰則に苛まれるため、青磁も色々天秤にかけて動いている。
青磁、可哀想に…。
俺はあたりの気配を探る。
良平は追いかけてこない。理由は解ってる。恨み言は本選持ち込みで。というところだ。
青磁も追ってこないことから、青磁を良平が引き止めたようだ。
俺の作戦はバレバレ。
さて、一年生の人気者はどうかというと、わざわざわかりやすく狙撃をしたというのに、俺という人間をしっているのか、動こうとしない。
反則狙撃に狙撃され、この程度ですんでいるというのがおかしいというか、その姿さえ大勢に見せるような真似をしている。これは罠に違いない。と思っている可能性が高い。
だが、俺の目的は狙撃をした人気者ではない。
その人気者についてくるファンたちだ。
わかりやすく気配を残しているのだから、追ってきてもらいたいものだ。
「お、結構きてるな」
気配どころか殺気を放ちながら俺を取り囲む、一年生。
一年の一番人気を狙撃しただけあって、引っかかるファンは多かったようだ。
きっとこの恨み言は後々まで尾を引くだろうが、尾を引いたところで普段の俺に影響があるわけでもない。さっさとやられてしまおう。
俺はナリアを持ったまま、フレドとライカを確認。ちゃんと腰に下げていたし、さっと見た限り、今まで逃げ回ったりした際にゴミがどこかにつまるということもなかった。
「さて、やるかな」
手を抜いていないという主張をするために俺はライカを手に取る。
これから一年生を相手に乱戦を繰り広げ、挙句、結構な数を撃破しながら、ギリギリのところで撃破される。これに限る。
しかし、銃を手に取り構えた時点で、気配が騒がしくなった。
俺が構えたことによってではない。
一つ、一つと、何かに撃破され、居なくなっていく一年生。
俺が拾っている気配の動きからみると、本当に忽然と消えていっている。
俺が気配を読めない攻撃系の人間ですぐに思い当たるのは、どこかの執念深い人だ。
大量に減らされると、何もしていなくとも俺が参加になってしまう。
是非とも俺に参加してもらいたい執念深い人は俺のことをどこかから見ていたのかもしれない。
何もしなくとも、予選中隠れていれば見つからないといってもいい人は、俺の様子を見ていたのかもしれない。
その考えることも大好きな頭で俺のずさんな計画など推測しきっているだろう。
もし、本当にその人が一年生を減らしているのなら、俺は戦闘真っ只中のそこに飛び込まねばならない。
そうして止めてしまわないと、作戦に簡単に引っかかってくれる一年生などそいつの相手にならない。ただの大量離脱の手助けになってしまう。
俺はその現場に飛び込んで、偶然一年生、またはそいつ…一織に離脱させられなければならない。
「難易度上がった」
と言いながら、一年生の殺気をかわし、一年生をうまくかわしながら、大量離脱の手伝いをしないように、一人も離脱させないで、その現場に向かう。
気配を消して木陰に隠れながら確認。
やはり一織が一人、また一人と…恐ろしいことに気配を感じないどころか姿さえもいちいち消してくれている。
こんな姿を隠し放題の場所ではやりたい放題になっている。実に厄介な場所で厄介な人と出会ったものだ。
なんの罪もない一年生には悪かったとしか言いようがない。
トラウマになるだろう光景がそこには繰り広げられていた。
何に倒されているのかもわからないのに、合ったはずの気配が次々消えていくとは、恐怖体験にしかならない。
そんなことを思って残り人数を携帯端末で確認してみると、前方ばかり見て腕をさするようにしていた俺の知り得ないところでもっと恐ろしいことが起こっているようだった。
大量離脱。
今度は一人一人ではない。
束で一気に居なくなる。
それをしているのは、今、俺の観測位置と定めている範囲よりおそらくはるか後方。
気配をたどることはできるだろうが、そうなると、前に向ける注意力を分散しなければならない。そうすると俺は恐怖体験をしなければならない。そのため、推測する。
良平に何か言われているのではなく青磁が俺に攻撃ではなく、俺の企みを潰そうとしているのではないだろうか。
三年生である可能性も高いのだが、三年生は必要以上に動いたりなんかしない。今はじっとしているはずだ。
それが頭に浮かんだあと、俺ははっとする。
考えてみれば恐怖体験してもいいから離脱する方向にすればいいのに、俺はいつもの癖で、生き残ることを考えている。
後方のことも考えないで俺は現場に飛び込む。気配はもう隠さない。
「手を出すと思っているのか?」
俺は、目の前で一人離脱させた暗殺者に笑ってみせた。
「見たからには手を出さないわけにもいかないだろう?…俺が攻撃するなら、なおのこと」
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