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三年生に手を出し大惨事。
普通ならそうだろう。
しかし反則狙撃は、人気者だが嫌われ者である。
味方とあれば三年生も大好き反則狙撃だったのだが、敵となればお話は別だ。
反則狙撃はかっちりと計算してくる。トーナメント形式のコロッセウム形式ならば反則狙撃という後輩を侮ることもできた。
しかし、そこは遮蔽物だらけの森のなか。
そして罠も仕掛けやすい森のなか。
もしも、反則狙撃が本気ならそこらじゅう罠だらけ。気配はないわ、読めてもカスみたいだわ、どこにいるかはだいたいでアバウト。狙撃手なんて普通は機動力ないはずなのに動く動く。どっから狙われてるかわからないし、弾の方向を意識したら動き回って別方向。
「最悪じゃんねー」
「同意」
本当は良平さん…猟奇と一緒に戦いたかっただろうアヤトリが俺と一緒なのは、アヤトリが猟奇を邪魔したくなかったからだ。
猟奇はこの予選、楽をするつもりらしく傍観を決め込んでいて、肩に負傷が出ても他の連中の攻撃を防御するのみ。
もしかして、反則狙撃の一発はわざとあたったんじゃないだろうか。
そう思うくらい、他の攻撃は完璧に防いだ。
反則狙撃の攻撃は、本当に気配もなく、殺気もなく、突然で狙われていたことさえ気が付かないくらいの末恐ろしいものだったが、反則狙撃の相方である猟奇が、相方の考えを読めないわけがない。
防げたはずだ。
魔法使いの参加は認めていなくとも、魔法は使えたのだから。
「怖いねー反則狙撃もだけど、猟奇も…」
「……」
猟奇がわざと反則狙撃の攻撃にあたったのなら、それはきっと、ペットを使うためだ。
やれといったら、そんなことをしなくても嬉しそうに実行するだろうに、たまにそうやって確かめるようなことをする。もうちょっと柔らかい確かめ方でもいいだろうに。
猟奇のペットのアヤトリは、そうしてオレと一緒に大量離脱をさせる運びとなった。
「三年生方はたぶん、反則離脱を望んでるんだけどねー」
二年は望んでいないため、あの手この手で反則狙撃をその気にさせるだろう。
その気になった反則狙撃なら、協奏といい勝負をする。
相手の行動を読み、自分の計画に練り込み、次から次へと行動に移し、現状を変える。打破する。
それをねじ伏せたいと思っている二年連中は案外鬼畜なのかもしれない。と、言っても、ねじ伏せたいなどと思っているのはごく一部だ。
あとは真面目に強い奴がいないのが嫌だといっているだけなのだが。
「ま、反則狙撃って結構のせやすいから、大丈夫っしょー」
俺はアヤトリに、にっこり笑う。
俺にとっては、面白いか否かだけが大事なのだから、あれがいるかいないかは結構重大な要素だ。
なんとか乗ってもらいましょう。俺の娯楽のためにも、ね?