クリアラインはギリギリおけ


風呂場からいつもどおり転送される。
そこは一応普通の競技をするために用意されたグラウンド。
学園の生徒は多いので、四色に分かれる。これも変装関連の問題で直前までその色分けは決まっていない。
風呂場から転送されたその場所で、はじめて自分が何組かを知る。
そのため、強制参加などは綺麗に人数分けができるのだが、それ以外がうまくいかないことが多々ある。
その時はその時に強制的に参加人数を増やしたり減らしたりする。
だが、先日予選のあったトーナメントは別だ。予選からすでにそれは勝負であり、色が偏っていようが偏っていまいが、関係ない。優勝した人間の色にのみ点数が入る。
そのため、強制的に人数が増えることもなければ、減ることもない。
できたらそれも人数調整が必要な競技であってほしかった。
そんな事を思いながら、俺は自分のいるグラウンドの地面を見る。
その地面の色は白。どうやら俺は白組らしい。
知り合いを探すと、良平が黒組にいた。
こうしてランダムに組分けがされるのだが、ランダムに組が決まらない人間もいる。
生徒会長、副会長、風紀委員長、副委員長だ。
この四人は毎年決まった色となる。
生徒会長は赤、副会長は青、風紀委員長は白、副委員長は黒。
これでは誰が生徒会役員であるか、風紀委員であるかバレそうであるが、バレない。
色は固定されているが、その色のリーダーになることがないからだ。
では、何故色が固定されているのか。
それは変装解除後、彼らが優勝旗を受け取るからである。
ということで、青磁は残念なことに主人とは離れ離れとなってしまったわけだ。佐々良が顔を手のひらで抑えて唸っているのがよく見えた。青磁は静かに佐々良を睨みつけている。
「不可抗力ってやつなのにぃ」
ぽつりとつぶやいたのは、人形使いだ。どうやら、最近人形使いとはちょっと縁があるらしい。同じ白組である。
「猟奇は楽しそうだがな」
鼻歌なんて歌っている。青磁がなんだかかわいそうだ。
「いつもの居残りメンバーとかいないのかなぁー?」
うんうんと頷いたあと、キョロキョロ周りを見渡し、人形使いは知り合いを探したあとある人物を見つけて唸った。
「青組にぃー、策士とぉ…近々の片割れがいるぅ…」
人形使いが視線を定めたところには、追求と舞師がいた。なるほど、策士と近々の片割れだ。なんだか、嫌な取合せである。
俺はそれを確認したあと、人形使いと同じように、いつものメンツを探す。
将牙と双剣は赤のようだ。どうも、コンビを揃えて置きすぎじゃないだろうか。俺と良平が離れているのはなんのめぐり合わせだ。
そうしていつものメンツがどこに配置されているかを確認していたら、良平と目が合った。
ニヤリと笑った気がする。
気がするだけだ。
なにせ、良平は変装時、仮面をかぶっているためどんな表情をしているかわからない。
それをみて俺も微妙な顔をしたに違いないのだが、俺もサングラスをしているため、表情の半分は隠れてしまっている。しかし、口は最大限にゆがんでいただろう。
「すっごい顔だねぇ」
「嫌そうだろ」
「…ちょっと、楽しそうでもあるけどぉ?」
そうでもないと否定することができない。
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