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反則くんは面白い。
ちょっとした縁から正体を知ってしまったけれど、もし、知らなくても出会うことがあればこうして友人関係を築けるような気がする。
この学園には変装前、変装後と友人が変わる者が多い。
もちろん、俺もそうであるし、反則くんだってそうだろう。
変装前と後で共通している友人もいるし、共通していても知らないまま卒業してしまう友人だっている。
もしかしたら、変装前には仲が悪く、変装後に仲がいい人だっているかもしれない。
それでも反則くんは、どちらであろうと、友人になれた気がする。
むしろ、友人になりたい。
彼は目的を果たすことを第一として行動し、ルールの抜け目を探し出し、ありとあらゆる手を使って目的を達成する。
それは策士といえる人間の手段。
策士なだけでは彼は嫌われてしまうだろうが、彼の少し適当でいて、一度乗った船は泥船でも降りないところが彼の魅力だと俺は思っている。
泥船に乗った上で、最高の結果を出す。
それは、泥船に乗った人間にとって、奇跡といえた。
だから、一織さんは彼を気に入り、最近では執拗に追っている。あれは、恋愛感情に違いない。
その近くで兄を見て、兄を追って、兄に焦がれる。そうして兄の傍にいる彼を見ることになっている十織は、何気ないふりをして、ひどく醜い感情をちらつかせる。
反則くんは面白い。
彼自身もそうなのだが、その周りも面白い。
あの有名な兄弟もそうであるし、彼の相棒の良平くんも、同じ魔法使いとして興味深く、面白く、そして、憧れ、羨ましい存在である。
風紀委員の二人もまるでそれが最初から普通であったように彼の前にいる。
面白いなと思うと同時に、つまらない。
将牙と俺とあと二人と。
形成してきた時間が重なり、懐かしくなるたび思うのだ。 どうして。
それがとてもつまらない。
俺は魔法使いの強制競技に招集され、魔法を展開するフィールドにたち、息を吸う。
久しぶりに人形繰り以外の魔法を使う。
手をかざし、開始の合図が聞こえると、展開と叫ぶ。
瞬発力がない俺だが、それでもクリアラインは楽々超える。
そう思えば、こういう瞬発力がない友人があと二人いた。
俺は少し笑う。
ちょっと遅れて発される魔術の光は遅れてもその場を友人特有の力の色に染める。
「……気のせいかなぁ」
呟きながら見たそこは、水色とも緑ともつかぬ光が溢れる。
「気のせいじゃないと思うよ」
俺のそばまでやってきて、友人の一人である追求がニヤリと口角をあげた。
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