名誉は不要


順調にプログラムは消化された。
色々な連中が阿鼻叫喚し、風呂場に転送されて悲しい思いをしようと、それはもう順調にプログラムは消化された。
順調すぎて遅れることもなかった。
魔術師連中の強制参加競技が終わってからぼんやりしていた人形使いが、次の競技を見て、プログラムが遅れるどころか競技が、いや、体育祭が今すぐ終わってしまわないかと思っていた俺の参加競技に気がついて、声をかけてくれた。
「次、障害物競走なんでしょぉ?」
人形使いの言葉に俺は頷いた。
障害物競走をとっている親しい友人はいないため、俺のぼっち参加だ。
ぼっち参加なのだが、やたらと疲れるレースで、教師陣にもやたらと俺の活躍を期待されているレースだ。いつものクリアラインが俺は特別、非常に高い位置に設定されていたりする。
そんな特別は欲しくない。
「勝機とかあるぅ?」
「…それは、優勝しろってことか」
「そうだねぇ。僕ぅ…君にぃ、一口かけてるのぉ」
「……儲けないだろ」
「うーん、反則はぁー人気だけどぉ…そこは、追求のご商売だからぁ」
俺にかけるときは非常に詳細な内容ができているらしい。
「僕はぁ…がつがつ罠を乗り越え利用し、仕掛けてぇ…三位くらいかなぁって」
実に正直かつ、的確な予想をしてくれている。
「いや、俺もそんなに頑張らないから」
「でも、クリアライン高め設定なんじゃないのぉ?」
この学園の有名人でなくても、こういった各個人によって用意されたクリアラインに対する認識は同じようなものだ。
よって、当然、こういったことは予測できる。
「そうだが、だからといって全力はない」
「そういうのを、放っておけないぃーって人が参加してたりしないのぉ?」
「それは判らないが、最終レースに配置されてしまってる」
人形使いが笑った。それはもう楽しそうに笑ってくれた。
「ふふ…楽しみだねぇ」
「俺は楽しくない」
本当にまったく楽しくない。
コースらしいコースはなく、石灰でラインすら引かれていない。ただ、木々や何かの棒が立っている、そんな場所。
スタートとゴールだけは決まっているが、様々な場所に仕掛けられた多くの罠。
この罠の宝庫に立ち向かうためには、一刻も早く、誰かが罠を増やす前に駆け抜けなければならない。 障害物競走。
最初は誰も罠など仕掛けていないコースに次から次へと罠を仕掛け、最終レースの人間を脅かすための競争である。
このレースの走り順は、普段の活躍で決まる。
一年生から三年生まで全員を混ぜて走らせ、制限時間内にゴールテープを切った人間を数え、順位と得点を決める。
俺は、不作の二年生の有名人だ。たかが二年生と思われていると思いたいたかったのだが、あまりにも二年の有名人は有名すぎる。
「そうかもねぇ。でも、見てるだけの人はたのしいよぉ」
俺はため息をつくしかない。
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