「あれ、109番だろ」
スクリーンに映る魔術師の一人を指差して、良平が呟いた。
「は?109番?」
「…あーこれ、システムのせいか。あーんー…何年か前、召喚と魔術の結婚だとか騒がれた人。俺のワンコの元相棒」
俺は記憶をたどる。
俺が中等部三年のときの高等部一年の人だ。二つ名は鬼道(きどう)だった。
これまでの召喚の概念を覆したとかで、この学園の図書館にも当時の映像を残したメモリーが残っている。
スクリーンに映る鬼道は確かに、当時の鬼道と同じ姿形をしていた。
「学園のシステムのお遊びとかではなく?」
「いや、魔術の構築の仕方がいっしょだ」
良平は魔法に関して言えば俺より研究熱心だ。
良平がそういうのならそうなのだろうと、俺は頷いたあとすぐに首を傾げる。
「ワンコ知ってるのか?」
「知ってるかもな。それどころか、魔法使い連中も知ってるかもな」
鬼道は高等部にはいってすぐくらいだろうか?学園から消えてしまったのだが、このスクリーンに映し出された様子や、学園のシステムにより『鬼道』と言えないことから再編入したことがうかがわれる。
この学園では退学、中途転校、中途転入は当たり前だ。
だから、有名人がいなくなっても、再び入り直したとしてもおかしなことはひとつもない。
だが、俺には鬼道の正体について少し思い当たることがあった。
おかしなことではない。
編入の時期、使う魔法の種類から考えても同一人物じゃないのだろうか。
秘密にしておけと言ってはいたものの、結構な大物だったなぁ…とスクリーンを眺める。
体育祭は俺が項垂れても、反則狙撃の活躍をスクリーンに流しても、順調に行われていた。
俺の参加競技は残すところトーナメント一つとなっていたのだが、その前に良平の参加競技である騎馬戦を見る予定だったのだが、良平は後半戦グループだとかで今は俺と一緒にスクリーンを眺めていた。
「お、あれ、人形使い」
「さすが。駒多いな」
魔法使いの騎馬戦は、本人が馬にのって戦うものではない。
魔法使いが作り出した駒が戦うゲームだ。
その駒の数は好きなだけ作り出せることになっているのだが、駒を形成することが最初の難関となる。
人形使いは普段からゴーレムをつくったり人形を操っている魔法使いは異常ともいう速さで次から次へと駒を形成、数でおしている。
この駒というのは馬に乗った騎士である必要はない。人の形をしている必要もない。球体でも四角でも、紙のようなものでもいい。
とにかく魔法のみで形成し、魔法のみで動いていれば問題無い。
「お、焔術師考えたな」
「火球とはお得意の焔術だな」
「繰れなければ意味はないから数は少なめか」
焔術師はそういった魔法操作を得意としていないため、動きは単純。しかし、駒の素体が炎とあって、一発当たっただけで相手をしている駒は大ダメージだ。一発当たると、その駒は消え、新しく追加するという方法を焔術師がとっているため、焔術師の駒が減ることはない。
この騎馬戦の勝敗は残存戦力によって決まる。
前半戦と後半戦に分かれているが、各色チームの魔法使いが混戦するのがこの競技。
それでも強い魔法使いが残るようになっている。
「猟奇がどんな手を使うか楽しみにしてる」
「楽しみにすんなよ、俺は一流じゃないからな」