やたら疲弊した様子で帰ってきた人形使いに手を振ってお出迎えをする。
「つかれたよォ…」
「お疲れ」
スクリーンには後半戦の参加選手の一部がピックアップされた映像が素早く流れていた。
猟奇は魔法使いとして派手活躍した覚えがないため、ピックアップされていない。追求や三年生の魔法使いの一部が映る中、俺は騎馬戦が行われているだろう場所を予測する。
「第17野外演習所か…」
「え、わかるもんなのォ?十番台のォー野外演習所ってぇーおなじようなのばっかりじゃなぁい?」
「解る解る、ちょっとずつ違うから」
人形使いが変態なんじゃないの?という目でみてくるので、俺は今回の騎馬戦の会場となる第17野外演習所の特徴を並べ立てることにした。
「まず、木や岩といった遮蔽物を徹底的に除去してある。その代わり穴があって、砂漠を再現した場所ほどではないにしろ砂地があり、足をとられる。建物等も一切ない。荒野を再現した野外演習所だが…」
「もういいよぉ。君が変質的なのはりかいしたしぃ」
失礼な。
そう思っても口には出さない。否定したところで余計に怪しいと言って怪しまれるに決まっているからだ。
「それよりぃー僕はぁ、猟奇の騎馬とかの解説してもらいたいねぇ…」
「じゃあ、その代わり、109番について教えてくれるか?」
人形使いがスクリーンから目を離し、俺に振り返る。
「え?」
「知り合い…さもすれば友人だと俺は推測してるんだけど」
「…なんで?」
俺も視線をスクリーンから人形使いに向けて、ニヤリと笑ってみせた。
反則狙撃の外見からいうと、イヤラシイけれどカッコよく見える類の笑みになったに違いない。
非常に残念ながら、普通のなんの魔法も使われていない俺が使えばいやらしいだけの笑みだ。
「有名になった時期がかぶってる…し、アヤトリとは前から友人だろ?あと、勘」
夏休みからなにやら楽しそうにしている佐々良のことも頭に浮かんだのだが、俺の心当たりが鬼道と同一人物なら、それはニヤニヤもするだろう。
普通に考えて、ひと波乱の予感だ。
もちろん、その波乱に一枚も二枚も佐々良がかんでいるだろうことも予測できる。
「うー…ごまかしがききそぉにないし…ま、反則くんには心配してないからぁ…心配してるのは、舞師」
「破砕の兄ちゃんがどうした?」
「……109番と元恋人」
人間って色々あるんだなと、少し驚いたところで騎馬戦は開始された。
「帰ってきたことぉ…知らなかったと思う、し…」
それはもう、ひと波乱起こっているのではないだろうか。
スクリーンの中であれだけ目立っていたのだから、人形使いの様子から推察するに誰にも教えてもらえなかっただろう舞師も知っただろう。
ただし、学園の悪戯なシステムが気まぐれを起こしたに違いないと思い込むこともできるため、確信はもっていないだろう。
「ま、今はこちらに集中する方がいいぞ、人形使い」
「そうだねぇ…仲よかったしぃ、ちょっと気になっちゃったけどぉ…今はこっちだよねぇ」
意外とさらっとしたものである。
それは、鬼道の性格をおもってのことか、他人のことはそこそこにしか興味がないのか。
「アー?こんなところにいたのかよォ…」
「破砕ー?あ、そっかぁ、反則くんと友達だっけ」
「そうだが?目的はお前だ、人形使い」
「なんで?」
「…なんでじゃねぇーよ」
将牙がやってきたのを見たあと、俺は再びスクリーンに戻す。
いつの間にそうなっていたのか、それとも元々そういう仲なのか。とにかく、人の恋路の邪魔はするものではない。
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