正直、本当に、俺にとっては当たり前で当たり前すぎて秘密とか言われてもピンと来ないことであったのに、そんな反応されたら、どういったつもりか知らないが特別な扱いをされているようで、腹がたったのだ。
こちらも会長を特別におもっていたわけで、特別だった分だけ、勝手な話、失望した。
そう勝手な話だ。
会長とは長い付き合いに入る方だと思う。
だが、それが長いだけで親しいとは言い難いものであったことを今更ながらに思い出す。
最近、遠くない距離にいたからすっかり忘れていた。
会長の出身地と家庭環境を考えれば、親しくもない俺がこんな反応をされたって仕方のないことだ。
どちらかというと、それを考慮すると会長はソフトな態度だったと思う。
けれど、その時の俺にはそれに気づくほどの時間的な余裕もなければ、心の余裕もなかった。
そうして俺は、さっさと授業に参加したのだった。
そんなわけだから、俺は自分の部屋に着く頃には心中穏やかではないのが続いていて、転送されても、それは続いていた。
簡単にいうと、気持ちがとても荒んでいた。
「反則くん、意外と肝が座ってるんだな」
たとえ、周りが教室でみたまんまの姿で戦闘しようとしていても、俺も俺のままの姿であっても、驚くというより、もうなんでもありという気分になっていた。
「そんなことはないんですけどね」
三年になれば、恨み云々を考慮した変装は解除され、自分の身は自分で守ろうということで致命傷以外は傷を負うことにもなっているらしい。教室での武器制限もなしだ。
非常に荒んだ学校生活を送らねばならないらしい。
だが、武器を携帯しているからといって、普段から争うというわけではないので、それほど荒んでいるというわけではない。
「よ、叶丞」
学園側の心もとない配慮から、俺は将牙と同じクラスだったようだ。
今日は、遅刻してこの授業にだけ出たらしく、いつもどおりのツートンカラー頭が見えた。
俺は、友人の挨拶に軽く手をふって答えたあと、教師に向き直る。
「今日は、叶丞くんの歓迎会をしたいんだが、いいかな」
いいかなと聞いてはいるが、都合が良くないといっても無視してくるのはよくわかっている。
「いいですよ」
その時の俺は、都合が良くないどころか好都合だった。
なんだか、イライラしていた。原因は明白だが、誰が悪いというわけでもなく、わかっているからこそ余計にイライラする。八つ当たりする対象すらいないとは本当にイライラするものだ。
「では、叶丞くん。好きなところに隠れるといい」
それは二年生を舐めてくれた発言なのか、俺の得意とするところを思っての発言なのかはわからない。
わからないが、俺はウェストポーチの中の石を確認したあと、頷く。
「解りました。では、15分ほどいただきます」
「了解した。じゃあ、15分の間、ここでよりすぐろうか」
15分間で俺を倒す人間をよりすぐってくれるらしい。
俺はその言葉を聞いてすぐ、走り出す。
今回飛ばされた演習場は屋外演習場。
俺の得意とする、建物の残骸が散乱する場所。
どの建物でもいいが、少し登りづらい場所がいい。
俺は気配を殺しながら、目をつけたビルへと飛び込む。
罠を仕掛けている時間はあまりない。俺の隠れたい場所に辿りつくまえに魔法石をばらまき、俺は超長距離砲であるバネッサと長距離砲を各種用意。
銃弾も用意したあとは、気配を読みながら少しずつ気配を特定していく。気配の塊が個々の点になるくらいまで、その数をきっちり数える。
クラスであっただろう数より明らかに多いことは深く考えずに、離脱していっただろう数、気配を殺そうとしている点を把握する。
15分を少し過ぎた頃、動き出す。
流石に15分間乱戦しているだけあって、すぐに俺に向かってこられる人間は少ない。まだ、乱戦をしているのだ。
俺はその数少ない人間を撃つ。
距離としては長距離砲で届くのだが、超長距離砲で確実に狙う。
超長距離砲の弾は中距離に使う銃弾と違って簡単に弾けるものではない。どこから向かってくるかもわからない上に、長い距離をとばすためにそれなりに火薬をつんで、それなりに大きさも必要なのだ。
そして狙撃の一撃目というのは、何処から撃っているかわからない分一番有利な状態だ。
これを逃してはもったいないというもの。
一撃で目的を果たさなければ、失敗というものだ。
一人目、超長距離砲により、離脱。
気配だけ確認すると今度は長距離砲を構える。
俺は余裕があり、狙撃をする限りは確実で堅実な場所を狙って狙撃をする。
たとえば一部の場所を狙えば落ちるだろう看板や瓦礫。
それくらいのものが落ちてきても、三年生は軽々避けてしまう。
そして、銃弾がきただろう方向に向かって走ってこようとする。
だが、その看板が落ちてくるというのはあくまで、その三年生にとってはアクシデントでしかない。少し体制だって崩れるし、崩していなくても予定外の位置に行かなければならないはずだ。
しかし、俺にとってそれは予定していた事項であり、そしてそれこそが俺の目的だ。
撃ったあとすぐさま隣に用意していた長距離砲を構え、焦点があったと思った瞬間に引き金を引く。
狙ったのは頭。
先輩方より高い位置にいるこちらからも狙いやすく、システムにすぐに致命傷と判断される場所だ。
俺の思った通りに避けて、俺の居てほしい位置に来た先輩はあえなく離脱。
俺はそれをまたも気配だけで察知する。
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