「今日のトピックスは賑やかだなぁ?」
ニヤニヤと笑いながら近づいてくる佐々良に、俺は微妙な表情をしてみせる。
「賑やかもなにも…なんや、俺もう、しばらく使い物になられへんわ…」
すっかり変装後の姿に映像を差し替えられ、加工されているトピックスは俺がやたらと石を使った罠を仕掛けた挙句、かつては佐々良につかった戦法を披露している姿を映し出す。
瓦礫でできた不安定な岩場、足場にした結界の上、それらに飛び乗ったりしつつ銃を乱射してるようにしか見えない俺…本当に色々映し出してくれていた。
「なぁーにいってんの。こんなに活躍しといて」
「いや、これだけ石使ってもたら、消耗品やから、次回からはしょぼいもんやで…」
「使い切ってはないんだろ」
「召喚するの以外はないんやけど」
佐々良が、指を鳴らした。
「今がチャンスだな。真面目に銃撃戦だ」
俺は首を振る。真面目に銃撃戦をするのなら、俺に中距離での攻撃をさせるべきではない。俺はいつも俺の土俵に立てていない。…気がする。
「ああ、そうだ、一織がトピックス見て、すごい舌打ちしてた」
「その報告いらんのちゃうかなぁ…」
恐らく俺も現場に一織がいたならばの舌打ちしたとは思う。その場に一織などいたのなら俺はあっという間に離脱を決めていたに違いないからだ。
ただでさえ会長と似たような顔をしているのだ。あの場にいたら冷静どころか募るイライラにブチギレた挙句、さっさと離脱だ。
すっかり戦闘でフラストレーションは晴らしてしまったのだが、あとになって考えると、本当、会長に無駄に八つ当たりしちゃったなぁと思ってしまった。
魔術都市では俺みたいな存在は気持ち悪いものでしかない。
魔術都市で俺みたいなのが成功していたのなら、俺みたいなのも多少はそういうものもあるみたいにとってくれるかもしれないのだが、試験管からホムンクルスが出てこない以上、俺みたいな外に出てきてしまった人間はないものなのだ。
ないものがあるってことは、あちらとしてはその技術に嫉妬ものだし、あるってことで気持ちが悪い。
そんなわけだから、生粋の魔術都市育ちには色々、複雑な心境を持たせる存在なのだ。
一織みたいな生粋の魔術都市育ちの上に旧家の出のくせに、平然と、俺の生まれより俺が副会長と言ったことを気にする人間のほうがおかしいのだ。
それでもそうされた方は、存外傷つくし、解っていても嫌なものは嫌なのだ。
会長の対応は、本当に至って柔らかい方だ。蔑んでいるわけでもなければ、嫌悪しているわけでもない。
「あ、あと伝言。『弟に声をかけるなら、手伝う』だそうな」
俺は、佐々良を見たあと、くり返し流れる俺の失態だか暴走だかを伝える画面を見る。
結局止めは将牙に刺されて離脱しちゃったんだけど、焦点はしっかり退けて、更に狙われる身となってしまったという、ちょっと苦い記録でもある。
「了解しました。…ところで、ひぃは、あれなんかな、ちょっと、のぞき見とかしてたりとかしたんやろか」
「あ?何が?」
そうでもないと、このタイミングでその言葉出てこないよ?
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