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キョーを罵るだけ罵って自分の部屋に帰ってから、キョーが弟に振られた日から、俺は文化祭の準備で忙しかった。
ということにしていた。
本当に泣いてしまったことも恥ずかしかったし、なにより困ったことに照れ隠し半分、本気半分で好き放題罵ってしまったため、妙な雰囲気になってしまわないかというのもあり、会わないようにしていたのだ。
日数にすると七日ほどもない間。
しかし、久しぶりと思うほど、ここのところキョーと一緒にいたようだった。
文化祭当日、準備時間に会った反則狙撃姿のキョーは俺に、久しぶりといった。
その言葉が、少しもおかしいと思わなかったことに、後ほど気がついた。久しぶりというほど会っていなかったワケではない。
けれど、そう思うことができることが、やたらとむずがゆい。
だが、その時俺はそんなことよりも気になることがあった。
焦点だ。
俺がキョーと居るようになる前から、なってから…進級課題が出た時から仲良くなった連中に関しては、キョーがどのように仲良くしていようといつも通りでいられるというか、興味の範囲外ですらある。弟については少々どころか多分に思うところがあるのだが、そこは例外だ。
それなのに、焦点と仲がいいように見えるのは腹立たしかった。
誰かが俺と焦点は時折、戦闘スタイルなどが似ているといっていたからかもしれないと思った。似ている方をとるなら、俺をとってくれればいいものをと思うのは、弟の時と同じだからだ。
しかし、それとは違うものだと、すぐに気がついた。
俺の知らないところで、知らないとは言い切れないが、接点の薄い人間と仲良くしているキョーがそこにいたから、俺は腹立たしく思ったのだ。
キョーとて、いつものメンバーだけが友達ではない。
魔法機械都市に帰れば俺の知らない友達もいるだろう。
だが、それは過去にできたものだ。
俺がどうしようもできないし、知らなくて当たり前のことだ。
けれど、最近になってできたものについて、俺は非常に心が狭かった。いや、腹立たしいだとか狭いだとかではないのかもしれない。
キョーが俺の知らない場所で変わってしまうことが、知らない人になっていくことが、嫌だった……寂しかったのだ。
それは、仕方がないことであるし、常に移ろって変わっていくものなのだから、なんでも俺がどうにかできることでもない。
わかっているのだ。
俺はキョーの友人の一人であり、そんなくだらないことで縛り付ける権利もなければ、八つ当たりするなど理不尽なことだ。
わかっている。わかっているから、自分自身にも腹がたつ。
「クソが」
イライラして、思わず生徒会室に戻って、最近迷惑をかけられている舞師に八つ当たりしてしまった。