◇◆◇



反則狙撃に話しかけてくれと言われ、困惑していると、アヤトリが言った。
「早く」
何を話しかければいいのか、分からず、俺はとりあえず、課題の話を聞いてみることにした。
「今回の、課題はなんなんですか?」
反則狙撃は俺ではなく、どこか遠くを見ているような目をしてよどみなく答えてくれた。
「俺や猟奇はたぶん、関係がない、けど、出題者がちょっと特殊で」
「特殊というと」
「寿、満は学外の人間で、その二人と同じ都市にいた109番が出題者」
「それは……どういう内容だったんですか、昨日は」
話しかけてくれというから、一応話は続けていたが、俺には少し思うところがあった。
109番というのは、千想のことだ。
千想とは、昔、恋人だった。
いや、昔と言わず、今もそうなのかもしれない。
「昨日は、寿と焔術師の戦闘現場に七人の人間が集まっていた。課題の内容はその時に起こった戦闘を含むと思うが、何かわからない」
「その、七人は誰ですか?」
「寿、満、109番、人形使い、焔術師、アヤトリ、俺」
千想が、この学園から出たのは、初めて出された進級課題の時だった。
その時、千想は、この学園のやり方が気に入らないといって、出て行った。
千想と一緒に課題を出された俺と将牙は、千想に一緒に出て行かないかと誘われた。
俺達二人は、この学園に入学することとなった主人を守るためについてきただけだ。主人がここにいるならば、この学園にいなければならない。
「あなたが巻き込まれた理由がわかりません」
「本気で巻き込まれただけだからな」
しかし、将牙が言った。
俺が残れば問題ないから、行ってこいよと、そう言った。
俺は悩んだ。
将牙が一人では、まだ、心配だった。
主人は友人らしい友人もあまりいなかったし、学園に置いていくのは気が引けた。
「それは災難ですね。それで、今はどうなってるんですか」
「早撃ちがかなりの確率で、出題者の協力者だということが解った」
主人は一緒に出て行かないといった。将牙もいるし、大丈夫だと言った。
けれど、俺は千想を選べなかった。
だからといって、こちらを選んだわけでもなかった。
どちらも選べなかった。
だから、結局、千想は一度居なくなった。
「嫌な予感がしますね。ところで、今は何をしてるんですか?」
「猟奇と早撃ち、あと昨日の五人を探している」
「気配の探索ですか……相変わらず、便利ですね」
帰ってきた千想から、まだ答えを持たない俺は、逃げている。
「そうでもない。アヤトリ、場所わかったぞ」
アヤトリが頷いた。
「舞師、来い」
反則狙撃が、微妙な顔をしただろう俺を見て笑った。
「従っておいたほうがいいぞ。アヤトリ、怒ってるからな、これで」
反則狙撃の言葉にアヤトリをみると、アヤトリは俺を睨みつけてきた。どうしようかと迷う時間も、なさそうに見えた。
next/ hl2-top