決勝戦は三組がぶつかるため、用意されたフィールドも広い。
広いが、まるで俺をいじめるために用意したかのようなフィールドだった。
「何故、岩もない荒野なんだ?」
「どう考えてもお前が不利なフィールドだなァ。がんば」
「いや、がんば、ではなく」
端末を操作してフィールドをくるくる回す。カーニバルの陣地であっても、他の陣地であっても、変わりなくなにもない。
強いて言うなら、ひび割れのようなものはあるが、そんなところに隠れても上にしか撃てない上に、埋められたら一瞬にして終わる。
ひび割れは利用することはあっても、隠れ場所として最適ではない。
「できるだけスピードスターの近くに出ないようにしようか」
「スピードスターはお前、一択だと思うが」
結局、カーニバル、近々、ラクシャスが決勝へと進んでいた。
近々は予想通りであったし、カプリースにいたってはやる気のない協奏が槍走が離脱したと確認するや否や、鬼道を巻き込んで離脱するという展開を見せてくれた。
鬼道である千想さんも、やる気が見えなかったため、業とらしい驚きの表情をみせて画面から消えたため、茶番のようだった。
「俺はアヤトリ、つか、神槍とやりてぇし、暗殺者はおまえとやりたいだろうし。舞師と鬼道も色々あるし?ちょうどいいじゃねぇか、分担されて」
「俺はよくない。苦手なんだよ、近接戦は」
面を頭の上に上げたままになっている猟奇が、ひきつった笑いを喉から出した。
顔は俺が、いかにおかしなことを言ったかを物語っている。
「おまえ、このまえ双剣に嫌がらせしてたし、さっきもやってきたじゃんよ。誰が苦手って認めてくれるよ」
端末を触るのはやめて、俺はわざとらしく肩を落とす。
「暗殺者とやりあったら、一瞬で終わる自信がある」
今度は、猟奇も笑わなかった。
端末の中にあるフィールドをしげしげと見たあと、俺を見て、首を横に振る。
「それでも、お前が暗殺者とやることになると思うぞ。端からスタートして、罠でも仕掛けておけばいいんじゃねぇの」
罠をしかけるにしても、罠になる素材がなければならない。
荒野とあっては、それこそ地面にあるひび割れくらいしか罠になりそうなものがなかった。
召喚するにしても、俺の使う召喚はそう便利なものではない。
「せめて糸でもあれば……」
そう呟いて俺は気がつく。
「そう思えば、糸使うやつがいたな」
「……そうだなァ」
「別に、一対一でなくてもいいだろ」
猟奇が俺の発言に、ゆっくりと口角をあげた。
それはそれで楽しそうだと判断してくれたようである。
「混戦といきますか」
端末に俺と猟奇の初期位置を設定する。
おそらく、ラクシャスの片割れである鬼道はフィールドの端からのスタートで、その近くに神槍という形ではなく、少なくとも二方向からの攻撃を考えて、神槍は真ん中辺りに居るだろうと推測して、俺たちはラクシャスに一番近い場所に位置することにした。
「さて、あとは、近々の二人がどう動くか」
「鬼道を二人で倒してこちらにきたとしても、神槍だし?俺たち二人は抑えることができるだろ」
「そうだな。俺は神槍の近くにいるだけで、構いたいわけでもないし」
優勝するつもりはまったくといっていいほどない。
しかし、わざと負けるつもりもない。
「勝てばいいんだよ、勝てば」
猟奇の呟きに、俺は頷くと、端末から手を離した。