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「和灯、どっちが叶丞くん?」
「え」
楽しくてしょうがないとはまさにこのことなんだろうなと思いながら、青少年二人を労働力として連れてきた団員の和灯に尋ねた。
都市から都市へ、国から国へと移動する俺達が稼ぎ時とばかりに、里帰りも兼ねてやってきた商業都市。久々に帰ってきたのは俺達だけではなく、現在は長期休暇くらいしか天幕にいない和灯もそうだった。
久々に見る和灯は、珍しく友人を連れてやってきた。
毎年商業都市には帰ってくるが、そのたび足りない労働力は現地調達する。
だから、和灯が友人を連れてくる必要はあまりないし、和灯の魔術師の友人を連れてこられても、軟弱そうで使えなさそうだから、和灯自身連れてこようとも思ってない風だった。
だが、今年和灯が連れてきた和灯の友人は一味違った。
「どっち?眼鏡の色男じゃないほう?」
「……そう、です。髪が長くてちょっと軽い風の……眼鏡の色男じゃないほうです」
俺の少々深読みすれば失礼な発言を繰り返しながら、和灯は彼ら二人の見世物から視線を外してこちらを見た。
「やっぱりそうか」
「やっぱり?」
不思議そうにしている和灯に説明もせず、叶丞くんを視線で追う。
一織くんとやらがたまに視線で追えなくなる動きをするのに、叶丞くんは、まるでこちらの視線を意識しているように動く。叶丞くんに一織くんとやらほどの速さがないだけなのかもしれないが、意識してやっているというのなら、とんだ食わせ者だ。
「話どおりか」
「話、通り……?」
疑問がうまくまとまらないらしく、俺の言葉を繰り返すことしか出来ない和灯が質問してくれる前に、俺は別の話題を出すことにした。
もし、和灯が質問をしてきたとしても、答える気がなかったからだ。
「一織くんとやらにはショーの手伝いをしてもらおう。叶丞くんは、雑用の手伝いをしてもらおうかな」
俺の発言に和灯が驚くのが手に取るように解った。
俺は舞台の上で楽しそうにも見える二人の戦闘を見ていたため、本当に驚いているかは確認しなかったが、すぐに声色で驚いているとわかった。
「雑用って……まさか、運び屋の手伝いじゃないでしょうね」
「そのまさかだ。叶丞くんはできるだろ」
ちらりと俺が、隣にいる和灯に視線を向けると、こちらを非難の目で見てくれていた。
「できるかもしれませんけど。学生です」
「そうだな。和灯は学生だから、させてないけどいずれするだろうね。けど、それが?叶丞くんは魔法機械都市の出身だろ?」
舞台の上では、叶丞くんがピンチに陥っていた。
そのピンチはあっという間に状況を変える。
「出身地なんて、言ってないのに」
一織くんとやらが負傷したと認識すると、俺は声を張り上げた。
「そこまで!」
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