俺はスコープを覗く。
 魔術師がいれば、その役割がサポートにしろ攻撃にしろ真っ先につぶしておくのが普通だ。彼らはこれを利用するつもりらしい。
 魔術師たちに攻撃を仕掛ければ、剣士が攻撃をしてきた敵を潰す。
 剣士に攻撃を仕掛ければ、魔術師たちが敵を潰す。
 そういう作戦なのだろう。スコープの中の彼らはとても微妙な距離を保ち互いを守っていた。
 しかもあちらは俺たちがぶつけてくるだろう相手が、静寂だとよんでいたらしい。
 静聴の二人は魔法を邪魔することができる。しかし、彼らの魔法の効く範囲は、剣士が走って叩きにいけるほどの範囲しかない。
 もう一人居れば静聴の二人を潰すのは確実であるが、この人員だ。俺たちがあちらの情報を得ているように、あちらもこちらの情報を持っているに違いない。
 もちろん他の魔法ならば彼らとて遠距離から攻撃が出来る。だが魔法を邪魔する魔法は、魔法を察知し読み込む必要があり、彼らが魔法を察知できる範囲でしか使えないそうだ。
「じゃあ、猟奇、サポートは頼む」
 俺は俺の視界を一部猟奇に繋げる。
 猟奇が一度うめいた後、だるそうに答えた。
「リョーカイ、アイボー」
 慣れないと、複数の視界のせいで酔うらしい。複数の魔法の処理をしている猟奇は余計に辛いものだそうだ。俺は、後輩のためにも、相棒のためにも、短い時間で勝負をかけなければならない。
 まずは、魔術師たちだ。
 スコープの円形の中、急に剣士が走り出す。これは、静聴二人の合図のようなものだ。魔法を阻害された魔機側の魔術師二人がそれでも魔法を使おうと足掻いている姿も見えた。
 俺は静聴の二人に向かっていく剣士を意識の端に置き、魔術師たちをスコープ内に捕らえたまま引き金をひく。
「ハァイ、一人目ェ……」
 猟奇が俺の代わりに一人目の離脱を確認した。
 剣士は俺の別の視界の中、消えてしまった一つの気配に振り返る。
 剣士があわてて残った魔術師の元へと走ろうとしたときに、猟奇の魔法が展開された。
 普段はあまり使わない転移魔法だ。転移させたのは、守りの堅い一年生である。
 守りの堅い二人に割って入られた魔術師は、威力は小さいが素早い展開ができる攻撃魔術を展開し始めた。
 守りが堅いとはいえ、魔術師と剣士の間に入っているのは武器を使う人間だ。物理攻撃には堅くとも、魔法攻撃には堅くないとふんだらしい。
 しかし、この二人は……ただしくはこのコンビは違った。魔法武器使いの一年生は、物理攻撃よりも魔法攻撃に強いのだ。そういう魔法武器なのである。予選の時点では使うことがなかったときいていたので、良い引っかけとなった。
 威力の弱い攻撃魔法は、何かに弾かれ、守りの堅い二人には届かない。
 俺はそれを確認した後、すっかり二発目を装填した狙撃銃の引き金をひいた。
「ハァイ、二人目ェ」
 二人目の魔術師が消える。剣士からしてみれば舌打ちものの光景だろう。しかし、剣士は冷静に一年生に対処しようとしていた。
 立ち回りはあちらの剣士より未熟な二人が剣士に隙をつかれるたびに、猟奇が小さな小さな結界を張る。猟奇も遠くへ人を送ることはできても、遠距離からサポートするには限度というものがあった。しかし、それを猟奇は精度で補っているのである。
 もしも、この小さな結界の介入があっても剣士の攻撃を防ぐことができないようなら、一年生コンビに名前などとうぶんつくことはないだろう。
 だが、やはり予選を勝ち抜くだけあり、二人は剣士の攻撃をなんとか防ぎ続けている。
「あとは静聴二人とも、任せた」
『ウィーッス、先輩マジパネェッスわ』
 俺は静寂の軽すぎる賞賛を了解の返事ととり、視界を一つ消した。後は後輩任せである。
「まずは三人ってかァ?」
「そうだな、次へ行こうか」
「ンー、リョウカーイ」
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