「あんた、あの魔術師しってんでしょ!」
新学期が始まると、編入生がやってくるうえに留年でのクラス落ち、退学、転学などがあって、クラスの様子がかわり、ちょっとの間『あんたなんてきぃきぃ!』の被害に会う。
毎年のことなんだけど、今年は一味ちがった。
ちょっと前までは生徒会長のファンに、会長の『コロス』発言によって追い掛け回されていたのだが、夏休みの間に副会長のファンが、会長ファンと抗争とでもいうのだろうか。とにかく大きな戦いが行われ、辛くも副会長のファンが勝利し、武器専攻の人間はだまり、魔法専攻の人間は一時的に黙ることになったらしい。
だから、俺はいつものごとく良平とつるんでいることを責められるはずだったのだ。
しかし、良平といることを責められる前に、良平の言うところのお間抜けな魔法使い…魔術師が俺を追いかけて、夏休みに馬車馬のように働かせた良平を探しているようだった。
運がいいのか悪いのか、そのお間抜けな魔術師は視力がよくなくて、良平を良平と認識できてなかったらしい。
破壊神だとかいわれてすごく取り上げられたのに、負けたとなると悔しくて、きぃきぃ言いながらさっさと帰ってしまって、良平の正体を知ることがないまま今に至るらしい。
俺にこうして声をかけられるのは、出場選手代表者は一番最初に知ることができるおかげであるようだ。
「いや、もちろん知ってるんやけども…なんの用なん?」
「僕は、あの時、結界を守ることで…仲間を守ることで手いっぱいだった!一対一なら負けないし!!」
負けないし。といわれても。
良平の実力からいうと、魔術師と一対一などやりたい放題だ。
展開の速さといい、武器を振り回すことといい。
正面から魔術師にかかってこられたら、楽勝の一言に違いない。
この程度の魔術師ならば、だが。
「一対一で戦いたいってことなん?」
「そんなわけないじゃん、馬鹿か君は!」
一対一なら負けないということはそういうことではないのだろうか。
思わずため息も出ようというものだ。
「今度の体育祭の競技で勝負しろって話だよ!」
俺に喚いてもしかたないことだ。
とりあえず、俺はこういうことにした。
「ああ、うん、伝えとくわー」
「絶対だぞ!絶対なんだからな!」
といって走り去っていく、お間抜けな魔術師。
「何の競技に出るか聞いてへんのやけどなぁ…」
俺はなにかかわいそうなものを見る目で彼の後ろ姿を見送ってしまった。
そんなこんなで、実は新学期始まって最初、実力テストが終わるとすぐ、生徒会主催のイベント…体育祭がある。
体育祭といっても、このブラックで戦闘狂な学園では、走ったり綱をひいたり…というオーソドックスな運動はさせてくれない。
殴り合いをしたり、魔法合戦をしたり…一学期…いや、夏休みの成果を見せろといわんばかりの競技が組まれる。
しかも、二日間。
「ややわぁ…夏休みなんてレースしかしとらんわ…」
実際は、レースに出るための魔法自走をいじったり、狙撃の練習をしたりもしたのだが。
やはり、ため息しか出ない。