おもちゃのへいたい


「副会長といえば茶だろー」
良平が突然言い出した。
何の定番なのか、そういうイメージというものがあるらしい。
何かを読んでいた副会長は、首をかしげ、暫くして答えを返した。
「飲みはするが、いれはしないな」
「得意そうなのに?」
イメージにこだわっているわけではないが、普通にしていれば柔らかい雰囲気を持つ副会長は、確かにアフターヌーンティーを決め込む貴族にも見えたかもしれない。
「…弟が」
「会長が?」
「勝手にいれてくれる」
会長の兄溺愛…ブラコンッぷりには頭が下がるというか。
今も自分の飲み物を取ってくるついでに、兄に飲み物を渡しているところだった。
それをなんとはなしに眺めている俺をみて、舌打ちしたのは何故ですか。見んなと、そういうことですか。
「じゃあ、お茶の入れ方がわからないとか」
「それはないが、弟の方がうまくできる」
至極当然のことのようにそういって、茶を飲む副会長は優雅にすらみえた。
事実、会長と副会長は貴族といっていい出身なのだから、当然といえば当然なのだが。
「やったら、料理とかはどうなん?」
「あ、興味あるわー」
良平の話にのって、料理ができるかできないかを聞いてみる。
それにはいはーいと手を挙げて自身の興味を示したのは風紀副委員長だった。
「どうって…別に普通だが」
困ったような顔をしたのは副会長で、傍にいた会長はその話題に興味がないようだった。
良平にひっついて離れない風紀委員長は、ふふんと鼻で笑いこういった。
「良平さんの料理は地獄の沙汰だ」
なるほど納得のポイズンクッキング。俺もそれを一口食べただけで箸を置いたわけだが、このあたりは本人も自覚していることで、『俺が料理なんか作った日には、誰か死ぬね』などといっていた。
委員長をなぐることもなく、委員長の無駄に自慢げな様子を鼻で笑い、そういうわけで。と料理の話は聞き専にまわる良平。
委員長がちょっと傷ついたみたいな顔したのは気がつかなかったふりをしよう。
「そういうお前はどうなんだ?」
豪快男の料理!切って焼いて塩と胡椒ふっとけばそれでよし。な将牙が俺に話をふる。
心なしかここにいる連中の視線が俺に集まる。
俺はえ?と微妙なかおを晒しつつ、歯切れ悪く答えた。
「ふ、ふつう…?」
実のところ、自分でもよくわからない。
調理って面倒だから。
「これは絶対普通じゃないだろ」
「今から作れよ」
「俺も付き合いなげーのにくったことないし」
俺に無茶を振るのが好きな会長が、ゴーサインをだし、良平が楽しそうに背中を押す。
副会長は不思議そうだし、委員長は良平にかまってもらえればそれでいいようだ。
「あ、じゃあ、副会長対反則でやろうぜ」
副委員長はいつも余計な提案をする。
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