オールインワンといっていいその服は、骨盤から胸の下あたりまで布ではなく蜘蛛の巣が貼ったようなデザインのレースで構成されていた。
伸縮は自在で、どんなにうごいてもわりと平気なようだった。
俺はかけたままのメガネの下から、目頭を押してもう一度鏡をみた。
ざっくりとえりが開いたそれは、首輪から垂れる金具により支えたれているのか引っ張られているのか。
服の袖はなく、長すぎる手袋が肩から何センチか下まで覆っている。
足には頼りない幅の布しかないスカートがあり、腰にはやたら財布が繋がっていないウォレットチェーンがぶら下がっていた。
スタッズが煩い飾りベルトは本当に飾りでしかなく、太ももにもベルトらしきものがついている。
「……睡眠不足、か?」
いつもどおりに寝て、いつもどおりに起きた。
不意に思いついたように携帯端末を取り出し、ある男に連絡をとると、その男はこう言った。
『おはよっていうか、早いよ、おじいちゃん』
「黙れ。これは、お前の仕業だな?」
『決めつけ?』
「ヘソピがねぇんだよ…と、その態度が明らかな証拠だ。それで、何が目的だ?」
『あは。そんなとこにピアスしてたの?エロいね、副会長。それと、話が早いね。反則くんと戦って。その格好で』
「何故?」
『面白そうだから』
「俺とキョーなのは?」
『だって、君たちの戦いってチョー人気だよ、知ってた?』
「…クッソ…」
『あ、戦ってくれないと元には戻さないからね。大丈夫大丈夫、ちゃんと変装後のすがたで戦うから、ね?』
通話が切れてしばらく経ってから、俺はあることに気がついた。
「変装後の姿で戦うなら、今、これである必要はねぇじゃねぇか…」
朝から余計な気力を使ってしまった。
思わず頭を抱えた俺だった。